【単行本】中山七里(2020)『夜がどれほど暗くても』角川春樹事務所
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:中山七里発行年月日:2020年3月18日
出版社:角川春樹事務所
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感想
★★★★☆図書館本
『さよならドビュッシー』シリーズの中山七里先生の作品。
中山先生のデビュー10周年を記念して「12ヶ月連続刊行企画」なるものをやっているそうですね。本作はその第3弾だそうです。
主人公は、突如、息子に殺人の疑いがかけられたことで、誹謗中傷を受けることになった男。
事件の報道があると、必ずと言っていいほど加害者の家族まで批判する人が出てくるのが嫌ですね。
作中に、加害者家族だけでなく、被害者やその遺族まで批判する人が出てきたのは、Yahoo!ニュースのコメント欄を見ているようで、なかなかイライラさせられましたよ(^_^;)
(見ない方が良いと分かっていても、つい見てしまうんだなあ。)
私は、親子仲が良い悪いに関係なく、そもそも親と子というのは別の人間なのだから、極端な言い方をすれば「血が繋がっているだけの他人」だと考えています。
主人公は、仕事を言い訳に家庭を顧みなかった、自分がもっと息子のことを気にかけていたら事件は起きなかったんじゃないか、と悩んでいたけど……
だいたいさ、愛情を注いで育てたからといって、必ず良い子に育ってくれるわけじゃないでしょうに。
なので、子が罪を犯したからといって、親の育て方が悪いからだと外野が責め立てるのは、本当におかしなことだと思うのですよ。逆もまた然り。
一方で、被害者の救済を考えると、(加害者自身が償えないのなら)親族が責任を負うべきだという意見は……まあ理解はできます。
客観的に見ればそんな必要はないと思うけど、それじゃあ被害者側は救われませんよね。
こればかりは実際に自分がその状況に置かれてみないと分からないからな。
でも、だからと言って、加害者家族は不当にバッシングされても当然だとは思えません。
この作品はミステリーというよりは、誹謗中傷がはびこる社会に異を唱えるための作品なのかな。
最後に、主人公と被害者遺族の少女の間に新たな絆が生まれて、未来に希望の光が見えたのは幸いでした。
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