【単行本】瀧羽麻子(2020)『女神のサラダ』光文社



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:瀧羽麻子
発行年月日:2020年3月30日
出版社:光文社
土の匂い、太陽の光、作物が繋ぐ人との絆。いいじゃない、農業。全国各地のさまざまな年代の農業に関わる女性を描いた八つの短編集。 (Amazon.com より引用)




感想

★★★★★
図書館本

都会での仕事に疲れ、新たな環境でやり直そうと農場に転職した女性の物語から始まり、離婚して実家の牧場に出戻ったシングルマザー、自分を捨てた昔の恋人との思い出に囚われたままの老婦人、等々……
この本には、農業にかかわる様々な女性たちの、様々な物語がありました。

彼女らの境遇も抱える悩みも、もちろんそれぞれ違いますが、育てる作物への愛は共通。
どの作品も胸がじんわりと温かくなる、そしてホロリと泣ける、そんな優しいお話ばかり。
食べる人の笑顔のために、丹精込めて作物を育ててくれる人がいることも改めて実感しました。



この短編集は全部で8つの作品から成り立っていますが、私の一番のお気に入りは「アスパラガスの花束」。
少女たちの友情に泣かされました。青春っていいなあ。
若い子たちの一生懸命な姿を見ると、こちらまで元気になれます。

あと、「本部長の馬鈴薯」も好きです。
口を開けば不平不満ばかりでも、本心では農業が楽しくて仕方なかったんだよね!
そう思うと、超イヤな奴だった本部長が、途端に愛おしく思えてくる不思議(笑)


『女神のサラダ』というタイトルで、各作品のタイトルにもレタスや茄子、レモン等の作物の名前が付いているからには、きっとそれぞれの短編がどこかで繋がっていて、最後は皆でサラダを作るんだろうな~と予想して読み始めたのですが、読み進めていっても特に共通する人物や出来事はなく……
(ほら、この手のオムニバス形式の作品って、どこかに共通する人物が置かれて、各作品が関わり合いながら展開することが多いじゃないですか。)

一向に交わる気配のない物語を読んで、「なんだ、単に農業にまつわる短いお話を集めただけなのね」と油断していたところに、最後の「トマトの約束」ですよ!
最後の最後で各短編が繋がって、なんとも色鮮やかなサラダが出来上がり、嬉しくなりました(^^)
カラフルでフレッシュな野菜がこんもり盛られたサラダ、いいなあ!美味しいだろうなあ!

このサラダのように色とりどりにきらめく農業女子たちの生き様に触れて、心が洗われるような、とても清々しい気持ちになれる一冊でした。



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