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遺産相続が浮き彫りにする家族の恨み――山崎豊子『女系家族』

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てっきり三姉妹VS妾の遺産相続争いかと思いきや、むしろ姉妹間の争いがメインなんですね。 矢島家の争いを読んでいると、不平等な待遇ってやっぱり人間関係を歪ませるんだな~と感じました。 遺産相続争い、現代の怪談、大阪の老舗……財産が多ければ多いほど、欲望もまた大きい。 大阪・船場の老舗矢島家は代々跡継ぎ娘に養子婿をとる女系の家筋。その四代目嘉蔵が亡くなって、出もどりの長女藤代、養子婿をむかえた次女千寿、料理教室にかよう三女雛子をはじめ親戚一同の前で、番頭の宇市が遺言書を読み上げる。そこには莫大な遺産の配分方法ばかりでなく、嘉蔵の隠し女の事まで認められていた。……遺産相続争いを通し人間のエゴと欲望を赤裸々に抉る長編小説。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『女系家族(上)(下)』 著者:山崎豊子 発行年月日:2002年4月20日 出版社:新潮社

「家」に人生を支配された人々の物語――山崎豊子『花紋』

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明治・大正の家制度って、想像以上に人の人生を縛っていたんだなあ。 誇り高き大地主の総領娘っていうと、私は『風と共に去りぬ』のスカーレットが思い浮かんだけど… あっちはスカーレットが前向きでたくましいからか、物語全体がどこかカラッとしているんですよね。 それに対して、郁子とこの作品に漂う陰鬱さよ。 ろうたけた美貌とたぐいまれな才を宿し、大正歌壇に彗星の如く登場し、束の間の輝きを放って突如消息を断った幻の歌人御室みやじ。河内長野の大地主の総領娘として、苛酷な因襲に抗いながら、国文学者荻原秀玲との宿命の恋に全てを賭け、略伝に夭逝と記されたように、自らの生をまで世間から葬り去った、激しい情熱と苦悶に貫かれたその半生を重厚な筆致でたどった長編小説。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『花紋』 著者:山崎豊子 発行年月日:2006年4月5日 出版社:新潮社

戦時中の空気の重さが胸に刺さる――佐多稲子「乾いた風」(『キャラメル工場から――佐多稲子傑作短篇集』所収)

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労働や戦争がテーマならいくらでもドラマチックな描き方ができそうなのに、それをせず、淡々とした筆致なのがかえって人間の心を露わにしているようで引き込まれました。 少女工員の労働の日々を描いたデビュー作「キャラメル工場から」、非合法の地下政治活動での女性の心の傷を描く「疵あと」、女ともだちとの数十年ぶりの再会と過去の事件を描く「時に佇つ その五」……労働、地下活動、戦争、東京や長崎の町、懐かしい友人たちについて自らの経験をもとに書き続けた「短篇の名手」佐多稲子。その最良の作品を収録した文庫オリジナルの短篇選集。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『キャラメル工場から――佐多稲子傑作短篇集』 著者:佐多稲子 編者:佐久間文子 発行年月日:2024年3月10日 出版社:筑摩書房 収録作品 キャラメル工場から 怒り プロレタリア女優 牡丹のある家 橋にかかる夢(『私の東京地図』より) 「女作者」 虚偽 薄曇りの秋の日 狭い庭 乾いた風 色のない画 水 かげ 疵あと 時に佇つ その五 こころ

仇討ちの作法に詳しくなれるかも!?――永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』

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映画が面白かったので原作小説も読んでみました。 結末を知っている身からすると、木挽町の人たちの過去語りが長いな…と、途中まで正直ちょっと退屈だったのですが、映画では語られなかった部分も描かれていたので(単に私が見落としていただけかもしれないけど)、読んで良かったです。 雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏で、菊之助なる若衆が果たした見事な仇討。白装束を血に染めて掲げたのは作兵衛の首級。その二年後。事件の目撃者を訪ねる武士が現れた。元幇間、立師、衣装部屋の女形……。彼らは皆、世の中で居場所を失い、悪所に救われた者ばかり。「立派な仇討」と語られるあの夜の〈真実〉とは。人の情けと驚きの仕掛けが、清々しい感動を呼ぶ直木賞・山本周五郎賞受賞作品。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『木挽町のあだ討ち』 著者:永井紗耶子 発行年月日:2025年10月1日 出版社:新潮社 ※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

シモネタ多めで飽きるが、刺さる話は強烈に刺さる――京極夏彦他『ひどい民話を語る会』

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面白くないわけじゃないけど… ウンコとオナラの話ばかりでさすがに飽きたな。 荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ! 「囲炉裏端にはコンプライアンスもポリティカル・コレクトネスもないんです。そして――。ひどい民話が誕生するんです」京極夏彦(「はじめに」より) 「桃太郎」の冒頭でお爺さんは柴刈りに、お婆さんは洗濯に行く。その理由とは……? メジャーな昔話の陰には数々の「ひどい民話」が埋もれている。 妖怪を愛好する面々が縦横無尽に語る、知られざる民話の世界。 全国各地から選りすぐりの民話を紹介する、伝説的トークイベント「ひどい民話を語る会」が、満を持して書籍化! 学問としても芸術としても敬遠され、表舞台からパージされてきた荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ。 ※下品な話が苦手な方はご遠慮ください。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『ひどい民話を語る会』 著者:京極夏彦、多田克己、村上健司、黒史郎 発行年月日:2022年10月28日 出版社:KADOKAWA

地方社会の閉鎖性を浮き彫りにする一冊――窪田新之助『対馬の海に沈む』

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ノンフィクションを読み終えて、「うわ、マジか」と声が漏れた作品は久しぶりでした。 人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………? 職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『対馬の海に沈む』 著者:窪田新之助 発行年月日:2024年12月10日 出版社:集英社

社会の圧力に飲み込まれた一人の女性――平路「モニークの日記」(呉佩珍ほか編『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』所収)

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文学作品としては表題作・陳雪「蝶のしるし」が抜きん出ていたなーと思ったけど、個人的には平路「モニークの日記」がめちゃくちゃ刺さりました! 複数形の、台湾文学。 恋愛結婚と出産を経て、幸せな家庭を手にしたはずの主人公が、「よき娘」「よき妻」を演じてきた人形のような過去に別れを告げ、同性への愛に生きる決心をする……その後の台湾レズビアン文学に大きな影響を与えた表題作「蝶のしるし」のほか、女性作家の小説全八篇を収録。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』 著者:江鵝、章緣、ラムル・パカウヤン、盧慧心、平路、柯裕棻、張亦絢、陳雪 訳者:白水紀子 編者:呉佩珍、白水紀子、山口守 発行年月日:2021年12月20日 出版社:作品社 収録作品 江鵝「コーンスープ」 章緣「別の生活」 ラムル・パカウヤン「私のvuvu」 盧慧心「静まれ、肥満」 平路「モニークの日記」 柯裕棻「冷蔵庫」 張亦絢「色魔の娘」 陳雪「蝶のしるし」