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戦時中の空気の重さが胸に刺さる――佐多稲子「乾いた風」(『キャラメル工場から――佐多稲子傑作短篇集』所収)

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労働や戦争がテーマならいくらでもドラマチックな描き方ができそうなのに、それをせず、淡々とした筆致なのがかえって人間の心を露わにしているようで引き込まれました。 少女工員の労働の日々を描いたデビュー作「キャラメル工場から」、非合法の地下政治活動での女性の心の傷を描く「疵あと」、女ともだちとの数十年ぶりの再会と過去の事件を描く「時に佇つ その五」……労働、地下活動、戦争、東京や長崎の町、懐かしい友人たちについて自らの経験をもとに書き続けた「短篇の名手」佐多稲子。その最良の作品を収録した文庫オリジナルの短篇選集。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『キャラメル工場から――佐多稲子傑作短篇集』 著者:佐多稲子 編者:佐久間文子 発行年月日:2024年3月10日 出版社:筑摩書房 収録作品 キャラメル工場から 怒り プロレタリア女優 牡丹のある家 橋にかかる夢(『私の東京地図』より) 「女作者」 虚偽 薄曇りの秋の日 狭い庭 乾いた風 色のない画 水 かげ 疵あと 時に佇つ その五 こころ

仇討ちの作法に詳しくなれるかも!?――永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』

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映画が面白かったので原作小説も読んでみました。 結末を知っている身からすると、木挽町の人たちの過去語りが長いな…と、途中まで正直ちょっと退屈だったのですが、映画では語られなかった部分も描かれていたので(単に私が見落としていただけかもしれないけど)、読んで良かったです。 雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏で、菊之助なる若衆が果たした見事な仇討。白装束を血に染めて掲げたのは作兵衛の首級。その二年後。事件の目撃者を訪ねる武士が現れた。元幇間、立師、衣装部屋の女形……。彼らは皆、世の中で居場所を失い、悪所に救われた者ばかり。「立派な仇討」と語られるあの夜の〈真実〉とは。人の情けと驚きの仕掛けが、清々しい感動を呼ぶ直木賞・山本周五郎賞受賞作品。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『木挽町のあだ討ち』 著者:永井紗耶子 発行年月日:2025年10月1日 出版社:新潮社 ※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

シモネタ多めで飽きるが、刺さる話は強烈に刺さる――京極夏彦他『ひどい民話を語る会』

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面白くないわけじゃないけど… ウンコとオナラの話ばかりでさすがに飽きたな。 荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ! 「囲炉裏端にはコンプライアンスもポリティカル・コレクトネスもないんです。そして――。ひどい民話が誕生するんです」京極夏彦(「はじめに」より) 「桃太郎」の冒頭でお爺さんは柴刈りに、お婆さんは洗濯に行く。その理由とは……? メジャーな昔話の陰には数々の「ひどい民話」が埋もれている。 妖怪を愛好する面々が縦横無尽に語る、知られざる民話の世界。 全国各地から選りすぐりの民話を紹介する、伝説的トークイベント「ひどい民話を語る会」が、満を持して書籍化! 学問としても芸術としても敬遠され、表舞台からパージされてきた荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ。 ※下品な話が苦手な方はご遠慮ください。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『ひどい民話を語る会』 著者:京極夏彦、多田克己、村上健司、黒史郎 発行年月日:2022年10月28日 出版社:KADOKAWA

誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう――前野ウルド浩太郎「孤独なバッタが群れるとき 『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1」

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飛行機がバッタの群れに巻き込まれたら、バッタが機体の隙間に潜り込んでエンジンが止まるかもしれないってマジで!? 空から殺虫剤撒いて駆除すりゃいいじゃんって思ってたけど、バッタって思いのほか厄介なんだな… 『呪術廻戦』芥見下々先生おすすめ! 第4回いける本大賞を受賞した名著が新書で登場! 【「新書版まえがき」より】 現在、私はバッタ博士としてアフリカでサバクトビバッタと格闘している。その模様は『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)に綴っており、本作は、それよりも前のバッ タ博士になろうかどうか思い悩みつつ、修業に明け暮れた頃に焦点を当てている。まさに「エピソード1」となる。今となっては気恥ずかしいが、青春の日々を、ひたすらバッタだ けを見つめることに捧げた青年が織りなすエピソードに、貴方をいざないたい。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『孤独なバッタが群れるとき 『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1』 著者:前野ウルド浩太郎 発行年月日:2022年5月30日 出版社:光文社

日本人はもっと魚を食べよう――川本大吾『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』

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子どものころ、間違ってサンマのはらわたを食べてしまったせいで、大のサンマ嫌いになった私。 小骨も多くて食べにくいし、どうしてこんな魚が秋の味覚として人気なのかサッパリ理解できなかったなー。 大人になってようやく美味しさが分かるようになったというのに、肝心の「美味しいサンマ」は消えてしまったという… 深刻な大不漁、超高値、外国産のシェア拡大――。取材歴30年以上の「さかな記者」が明かす、日本の漁業・水産業が衰退している訳。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』 著者:川本大吾 発行年月日:2023年12月20日 出版社:文藝春秋

孤独と抵抗を静かに語る言葉たち――劉霞(リュウ・シア)『毒薬』(劉燕子・田島安江訳・編)

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この本が発売された2018年3月時点では著者はまだ北京で軟禁状態に置かれていたようですが、同年7月に軟禁を解かれドイツへ出国。 さらに今年7月からは日本に滞在しているそうで… 『私は外務省の傭われスパイだった』 を読んだばかりということもあって、日本も危ないんじゃ?と心配になってしまいます。 劉霞から劉暁波へ、詩集『牢屋の鼠』への返歌。 一匹の魚、一羽の鳥となった劉暁波への切なくかなわぬ恋文。 劉暁波に与え続けた同志としてのエール。 劉暁波亡きあとも生きるための薬である。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『毒薬』 著者:劉霞 訳・編者:劉燕子・田島安江 発行年月日:2018年3月2日 出版社:書肆侃侃房

コンプライアンス中毒の正体は脳にあった――中野信子『咒の脳科学』

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内容は面白かったし、自分の中の価値観を見直すきっかけにもなったのだけど。 正直なところ、咒とはあまり関係なかったような…? なぜ、私たちは、周りの言葉にこんなに苦しんだりするのでしょう? 人を息苦しくさせる――SNSにあふれる呪いの言葉、病気にもしてしまう暗示。刷り込まれる負けグセ。 脳を中毒にする――イケニエを裁く快楽、罰を見たい本能や正義という快感。ウソつきの遺伝子がモテる。 知りたくなかった現実――男のほうが見た目で出世、女はここまで見た目で損をする。脳に備わっていたルッキズム。 私たち人間の社会は咒(まじない)でできていると言って過言ではないのです。 なぜなら言葉が、意識的と無意識的とにかかわらず人間の行動パターンを大きく変えてしまう力があるから。 人間関係や仕事、人生の幸不幸も、あなたを取り巻く社会の空気さえ。 そして今SNSがひとりひとりを孤立させ、言葉はいっそう先鋭化しています。 正義や快楽に中毒する脳そのものが、そもそも人間社会を息苦しくする装置です。 本書の役割は、脳にかけられた咒がどのようなものかを知らせ、解放することにあります。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『咒の脳科学』 著者:中野信子 発行年月日:2025年3月4日 出版社:講談社

やっと分かった、「サラダ記念日」が刺さらなかった理由――俵万智『サラダ記念日』

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7月6日にアップしたかったけど間に合わなかった…。 〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉――日常の何げない一瞬を、新鮮な感覚と溢れる感性で綴った短歌集。生きることがうたうこと。従来の短歌のイメージを見事に一変させた傑作! ( Amazon.com より引用) 作品情報 『サラダ記念日』 著者:俵万智 発行年月日:1989年10月4日 出版社:河出書房新社

実家じまいに悩む全ての人へ――高殿円『私の実家が売れません!』

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ダンナの両親に読ませたい~~! 郊外築75年、大量のガラクタ、恐怖の再建築不可物件……。 残された実家は超問題だらけ!! 笑いと涙、前代未聞の実家じまい本! 維持費に相続手続き、片付けに親族問題、税金対策に売却まで、いま話題の”実家じまい”問題にドラマ&漫画化多数の人気作家・高殿円氏が挑み、リアルな実体験を綴ります。 親戚トラブルの回避、税金に相続問題、長年放置している家財の片づけ方、不動産仲介業者に断られた物件を意外な場所で売る方法まで……。 不動産の専門家による解説を収録し、楽しく読めながら自然と実践的な知識も身に付きます。 笑えて泣けて、知識もつく、超お得な1冊!”実家じまい”のお悩みを全解決する、ページをめくる手が止まらなくなる新感覚の人情派「実家じまい」エッセイです。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私の実家が売れません!』 著者:高殿円 発行年月日:2024年7月19日 出版社:エクスナレッジ

教養ある悪口のすすめ――堀元見『教養悪口本』

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悪口繋がりで読んでみたら、この本にも中原中也の「青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」が出てきて笑った。 (関連記事: 天才たちのレスバ合戦が面白すぎた――彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』 ) インターネットに氾濫する悪口がつまらないのは、そこに知性もユーモアも宿っていないからだ。「こいつ無能。死ね」というツイートを見て、楽しい気分になる人はいない。「こいつ無能」と言いたくなった時は、代わりに「植物だったらゲノム解析されてる」(本書14ページ)と言おう。周囲も「えっ、何? どういうこと?」と興味を惹かれるだろうし、生命科学の発展に思いを馳せる良い機会になる。 不快さを、楽しさや知的好奇心に変えられるのが、「正しい悪口」の効能なのだ。 僕はこれを「インテリ悪口」と称して、インターネットに書き溜めてきた。<略> 皆さんが何かをバカにしたくなった時、本書を活用してほしい。僕が可能な限りの知性とユーモアを詰め込んだ「インテリ悪口」を使ってほしい。 嫌なことがあった時、インテリ悪口を使うことで、溜飲も下がるし、笑い飛ばすこともできる。ちょっとだけ勉強にもなると思う ( Amazon.com より引用) 作品情報 『教養悪口本』 著者:堀元見 発行年月日:2021年12月30日 出版社:光文社

天才たちのレスバ合戦が面白すぎた――彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』

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今だったらXでレスバする感覚でしょうか? 好きな作家がしょうもないことでバトルする姿…。 うーん、見たいような見たくないような。 文豪と呼ばれる大作家たちは、悪口を言うとき、どんな言葉を使ったのだろうか。 そんな疑問からできたのが、本書『文豪たちの悪口本』です。 選んだ悪口は、文豪同士の喧嘩や家族へのあてつけ、世間への愚痴など。随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました。これらを作家ごとに分類し、計8章にわたって紹介していきます。 川端康成に「刺す」と恨み言を残した太宰治、周囲の人に手当たりしだいからんでいた中原中也、女性をめぐって絶交した谷崎潤一郎と佐藤春夫など、文豪たちの印象的な悪口エピソードを紹介しています。 文豪たちにも人間らしい一面があるんだと感じていただけたら、うれしく思います。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『文豪たちの悪口本』 編者:彩図社文芸部 発行年月日:2019年6月21日 出版社:彩図社

「私は美人」と思い込む――酒井順子『私は美人』

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最初のうちは面白くてページをめくる手が止まらなかったけど、美人に関する文章ばかり続くとさすがに疲れたな。 でもまあ、それだけ「美人」というテーマはネタが尽きないということか。 女に生まれたからには、誰もが目指す「美人」という山の頂点。しかし、私たちはなぜ美人になりたいのか。そもそも美人とは何なのか。性別、年齢、地域はもちろん、一人の人間の主観と客観の間においてさえ微妙に揺れる美人観。美人を目指さずにはおれない女性たちの行動と心理に潜むその本質を、持ち前の鋭い観察眼で喝破し、ユーモアで包んで読ませる、身につまされる美人論。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私は美人』 著者:酒井順子 発行年月日:2007年11月30日 出版社:朝日新聞社

棄てられない記憶――村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』

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猫好きとしては読むのを躊躇ってしまうタイトル。 村上春樹のお父さんって戦争を経験している世代なんだ… ということにまず驚いた。 時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある。ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた。―村上文学のあるルーツ。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『猫を棄てる 父親について語るとき』 著者:村上春樹 発行年月日:2020年4月25日 出版社:文藝春秋

「逃げてるだけ」なのか――松永K三蔵『バリ山行』

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山ですか?天保山なら登ったことありますよ。 第171回芥川賞受賞作。古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で職場で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。 「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか! 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!」(本文より抜粋) 会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。( Amazon.com より引用) 作品情報 『バリ山行』 著者:松永K三蔵 発行年月日:2024年7月25日 出版社:講談社 バリ山行 感想 ★★★☆☆ 図書館本 『バリ山行』の「バリ」って、昔流行った「バリうざい」「バリかっこいい」とかの「バリ」だと思ってました。 実際には「バリエーションルート」の略で、通常の登山道ではないルートのこと。 当然、整備されたルートではないから、大けがや遭難に繋がりかねない危険なルートで、マナー違反だと非難されたりもする。主人公の職場の先輩・妻鹿(めが)は、そんなバリをやっているらしい。 主人公・波多は前職でリストラに遭い、なんとか転職したものの今の職場も存続が危うく、またもやリストラされるかもしれないという状況。しかも妻と幼い娘までいる。 私だったらプレッシャーでおかしくなりそう。 そんな波多が妻鹿と一緒にバリに出かけることになり、やはりというか、バリ初心者の波多は峪に落ちかけて死ぬ思いをすることになります。 死にかけた恐怖で頭がいっぱいの波多に対して、妻鹿が放った 「ね、感じるでしょ?波多くん」 「問答無用で生きるか死ぬか。まさに本物だよ。ひりつくような、そんな感覚。」 という言葉がきっかけになって、波多は 「そんなもの感じるわけないじゃないですか!死にかけたんですよ!」 と声を荒らげる。    ...

コリンズのプロポーズは必見――ジェイン・オースティン『自負と偏見』(小山太一訳)

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エリザベス、リジー、イライザ… これだけで十分ややこしいのに、ミス・エリザベスと呼ばれたかと思えばミス・ベネットと呼ばれたり。 呼び名の他に、親戚関係もこんがらがる。 登場人物表をつけてくれ~! 恋心か打算か。幸福な結婚とは?軽妙なストーリーに織り交ぜられた普遍の真理。 永遠の名作、待望の新訳!解説・桐野夏生。 イギリスの静かな田舎町ロングボーンの貸屋敷に、資産家ビングリーが引っ越してきた。ベネット家の長女ジェインとビングリーが惹かれ合う一方、次女エリザベスはビングリーの友人ダーシーの気位の高さに反感を抱く。気難しいダーシーは我知らず、エリザベスに惹かれつつあったのだが……。幸福な結婚に必要なのは、恋心か打算か。軽妙な物語(ストーリー)に、普遍の真理を織り交ぜる。( Amazon.com より引用) 作品情報 『自負と偏見』 著者:ジェイン・オースティン 訳者:小山太一 発行年月日:2014年7月1日 出版社:新潮社 自負と偏見 (新潮文庫) 感想 ★★★☆☆ 図書館本 この作品を初めて読んだのは確か高校生のとき。 そのときは、家柄は大したことないけど綺麗で賢い女性が、一見傲慢だけど実は心優しいイケメン紳士に見初められ玉の輿に乗る…という少女漫画的な展開にときめいたりしたけど、今読むとストーリー自体にはそれほど惹かれなかったな。 それよりも、描写が生き生きしていて、登場人物の性格とか関係性が手に取るように分かる。 その表現の上手さに魅了されました。 冒頭のベネット夫妻の会話がまず見事ですもんね。 昔は、ミセス・ベネットの俗物ぶりを軽蔑し、ミスター・ベネットのウィットに富んだセリフを面白く読んでいましたが、改めて読むとミスター・ベネットの父親としての責任感の無さに腹が立つな。 ミセス・ベネットにとっては自分と娘たちの生活がかかってるから少しでも有利な結婚をさせようと必死なのに夫はどこ吹く風…ときたら、そりゃヒステリーも起こしたくなるってもんです。 人物紹介だけでなく、夫婦間で価値観が一致していないとこんなに不幸だぞ~ということもこの会話に示されているように感じます。 この作品は脇役にもちゃんと個性があって、思いがけない動きをするから侮れません。 一番面白かったのが、ミスター・コリ...

読み直したら痛いほど共感した――太宰治「走れメロス」(『走れメロス』収録)

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結婚式の日取りも決まってないのになんで御馳走を買ってるんだよ!とか、 歩いてないで今すぐ走れよ!とか、 国語の授業で「走れメロス」を習ったときは、そんなツッコミで盛り上ったな。 親友との約束を果たすためにメロスは走る-。信頼と友情を謳い上げる表題作ほか、生きることの意味を考え続けた著者の名作短編集。太宰入門にふさわしい1冊。(解説・池内輝雄/鑑賞・井坂洋子)( Amazon.com より引用) 作品情報 『走れメロス』 著者:太宰治 発行年月日:1999年5月25日 出版社:集英社 ヤング・スタンダード 走れメロス・おしゃれ童子 (集英社文庫 た 26-2) 収録作品 燈籠 満願 富嶽百景 葉桜と魔笛 新樹の言葉 おしゃれ童子 駈込み訴え 走れメロス 清貧譚 待つ 貧の意地 カチカチ山 感想 ★★★☆☆ 購入本 「カチカチ山」が読みたくなって買った本なんですけど、表題作の「走れメロス」って改めて読むとイイですね。 教科書に載っているくらいだから名作なのは当たり前なんですが、大人になってから読むと他者から「信頼されている」ことの重みがより分かるというか。 メロスはダメ人間 そもそもメロスって、怒りに任せて王様を殺しに行こうとして捕まったうえ本人の許可も得ずにセリヌンティウスを身代わりとして差し出すという、とんでもなく短絡的で自己中な男ですよね。 「きょうはぜひとも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。そうして笑って磔の台に上ってやる」なんて言っちゃって、ええカッコしいでもある。 この作品は、そんなダメ人間・メロスの成長物語なんだということがよく分かりました。   メロスは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い人たちと生涯暮らして行きたいと願ったが、いまは、自分のからだで、自分のものではない。ままならぬことである。メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。(P140)   妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。私には、いま、なんの気がかりもないはずだ。まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要もない。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気さを取り...