やっと分かった、「サラダ記念日」が刺さらなかった理由――俵万智『サラダ記念日』

7月6日にアップしたかったけど間に合わなかった…。

〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉――日常の何げない一瞬を、新鮮な感覚と溢れる感性で綴った短歌集。生きることがうたうこと。従来の短歌のイメージを見事に一変させた傑作! (Amazon.com より引用)

作品情報

『サラダ記念日』

著者:俵万智
発行年月日:1989年10月4日
出版社:河出書房新社

感想

★★★☆☆
購入本

小学校だったか中学校だったかの教科書に

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

が載っていて、そのときに本のタイトルにもなっている

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

を教わった気がするんですけど…この歌、私は全っっ然ピンと来ないんですよね。
今回初めて俵万智さんの歌集を読んで、なぜこの歌が刺さらないのか分かりました。

私、恋愛に興味がないんだ!

恋人とのなんでもない一日に「○○記念日」と名前つけちゃう人や、ファッションを恋人の好みに合わせて変えてしまう人、私は「理解できん…」と思ってしまうタイプだから、きっと恋愛に対する価値観や経験が俵さんと違いすぎて共感できないんでしょうね。だからこの歌もそんなにいいと思えない、という。
この本に載っている他の恋の歌についても、正直「ふーん」「恋愛脳だなあ」以外の感想が出てこなかったんですよ。

でも、「寒いね」の歌の方は凄くいい歌だなと思うし、好きなんです。
実はこの歌も恋の歌だという話を最近知ってめちゃくちゃ驚いたんですが、まあ相手は誰でもいいですよね。友人・知人、あるいは家族、誰であったとしても、ささやかな気づきや感覚を人と共有できるのって嬉しい。

そういう点で、中国旅行がテーマの「夏の船」は特に面白かったです。

日本にいれば欲しくはならぬのに掛け軸を買う拓本を買う

旅行あるあるですよね。激しく同意。
こういう自分にも経験がある歌は、恋の歌にはなかった「自分の中に入ってくる感じ」がありました。

それから

大陸に我を呼ぶ風たずさえてミルクキャラメル色の長江

この歌も好きです。
俵万智さんの感性スゴイな~~!って思いますよね。だって川の色をミルクキャラメルに喩えるんですよ!?
ミルクキャラメル色ってことはオレンジ寄りの茶色?キャラメルってなんとなく懐かしいイメージがあります。夕日に染まった長江がふっと目に浮かんで、とても印象的でした。

これまで俵万智=サラダ記念日のイメージしかなくて食わず嫌いしていたのですが、日常のふとした瞬間が31文字の中に率直に、見事に表現されていて、素直に「ああ、いいな」って思えました。



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