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「家」に人生を支配された人々の物語――山崎豊子『花紋』

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明治・大正の家制度って、想像以上に人の人生を縛っていたんだなあ。 誇り高き大地主の総領娘っていうと、私は『風と共に去りぬ』のスカーレットが思い浮かんだけど… あっちはスカーレットが前向きでたくましいからか、物語全体がどこかカラッとしているんですよね。 それに対して、郁子とこの作品に漂う陰鬱さよ。 ろうたけた美貌とたぐいまれな才を宿し、大正歌壇に彗星の如く登場し、束の間の輝きを放って突如消息を断った幻の歌人御室みやじ。河内長野の大地主の総領娘として、苛酷な因襲に抗いながら、国文学者荻原秀玲との宿命の恋に全てを賭け、略伝に夭逝と記されたように、自らの生をまで世間から葬り去った、激しい情熱と苦悶に貫かれたその半生を重厚な筆致でたどった長編小説。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『花紋』 著者:山崎豊子 発行年月日:2006年4月5日 出版社:新潮社

地方社会の閉鎖性を浮き彫りにする一冊――窪田新之助『対馬の海に沈む』

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ノンフィクションを読み終えて、「うわ、マジか」と声が漏れた作品は久しぶりでした。 人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………? 職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『対馬の海に沈む』 著者:窪田新之助 発行年月日:2024年12月10日 出版社:集英社

社会の圧力に飲み込まれた一人の女性――平路「モニークの日記」(呉佩珍ほか編『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』所収)

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文学作品としては表題作・陳雪「蝶のしるし」が抜きん出ていたなーと思ったけど、個人的には平路「モニークの日記」がめちゃくちゃ刺さりました! 複数形の、台湾文学。 恋愛結婚と出産を経て、幸せな家庭を手にしたはずの主人公が、「よき娘」「よき妻」を演じてきた人形のような過去に別れを告げ、同性への愛に生きる決心をする……その後の台湾レズビアン文学に大きな影響を与えた表題作「蝶のしるし」のほか、女性作家の小説全八篇を収録。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』 著者:江鵝、章緣、ラムル・パカウヤン、盧慧心、平路、柯裕棻、張亦絢、陳雪 訳者:白水紀子 編者:呉佩珍、白水紀子、山口守 発行年月日:2021年12月20日 出版社:作品社 収録作品 江鵝「コーンスープ」 章緣「別の生活」 ラムル・パカウヤン「私のvuvu」 盧慧心「静まれ、肥満」 平路「モニークの日記」 柯裕棻「冷蔵庫」 張亦絢「色魔の娘」 陳雪「蝶のしるし」

バッタ研究にかける情熱に圧倒される――前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

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著者が『ファーブル昆虫記』に感銘を受けて昆虫学者を目指すところまでは理解できる。 でも…「バッタに食べられたい」ってどういうこと!? バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。 それが、修羅への道とも知らずに……。『孤独なバッタが群れるとき』の著者が贈る科学冒険ノンフィクション! ( Amazon.com より引用) 作品情報 『バッタを倒しにアフリカへ』 著者:前野ウルド浩太郎 発行年月日:2017年5月20日 出版社:光文社

日本の弱腰外交を突きつける一冊――原博文『私は外務省の傭われスパイだった』(茅沢勤訳)

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タイトルからして衝撃的。 「スパイもののノンフィクション?ちょっと小説っぽくて面白そう」くらいの軽い気持ちで読み始めましたが、読み進めるうちに全然そんな軽い話ではないと息をのみました。 筆者は中国残留孤児2世で外務省の元対中国スパイ。 96年に中国国家安全省に逮捕され、懲役8年の判決を受けた。外務省は彼を見捨てた。 「日本のスパイ活動」と「中国の監獄」という数奇な実体験の書き下ろし。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私は外務省の傭われスパイだった』 著者:原博文 翻訳:茅沢勤 発行年月日:2008年5月19日 出版社:小学館

人間性とアンドロイド性――フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(浅倉久志訳)

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虫を見つけたら問答無用で殺虫剤を振りかける私でさえ、プリスがクモの脚を切断するシーンには打ちのめされました。 イジドアと接することで、ひょっとしてアンドロイドたちにも思いやりの気持ちが芽生えるのかな?と思った矢先だっただけに。 第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界! リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作。 35年の年を経て描かれる正統続篇『ブレードランナー2049』キャラクター原案。( Amazon.com より引用) 作品情報 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 著者:フィリップ・K・ディック 訳者:浅倉久志 発行年月日:1977年3月15日 出版社:早川書房 アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) 感想 ★★★★☆ 図書館本 訳者あとがきで、後藤将之氏の論評が引用されていて、そこに    人間もアンドロイドも、ともに、親切な場合もあれば、冷酷な場合もある。ディックが描こうとしたのは、すべての存在における人間性とアンドロイド性との相剋であって、それ以外のなにものでもない。 と書いてあるのを読んで、まさにその通りだなと感じました。 人間であるイジドアは逃亡アンドロイドに最初から親切だったけど、同じく人間であるレッシュは、死を目前にしたアンドロイドに本を読むわずかな時間さえ許さず殺してしまうくらい冷酷な人物として描かれています。 でも、全ての登場人物が「親切」と「冷酷」に二分されているわけではないですよね。 最初はアンドロイドや模造動物のことなんてただの機械としか思っていなかったリックが、次第にアンドロイドに同情を示すようなったり、感情移入できない存在として描かれていたレイチェルがリックに恋愛感情に似たものを抱くようになったり。 「親切」と「冷酷」、どちらも合わせ持つのが人間で、私たちは人間にもアンドロイドにも、ち...

強姦犯を愛した女の子?――林奕含(リン・イーハン)『房思琪(ファン・スーチー)の初恋の楽園』(泉京鹿訳)

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冒頭の比喩表現から凄い。 主人公の親友・劉怡婷(リュウ・イーティン)が、高級食材のナマコを便器の底のウンコに喩え、そのナマコを口に入れてから吐き出して「これってフェラチオみたい」と言う。 この描写だけで、意味も知らずにフェラチオという言葉を使うような年頃の少女に性行為を強要することのおぞましさが伝わってくる。 台湾で25万部突破! 台湾社会を震撼させた、実話にもとづく傑作長篇 著者は1991年生まれの女性作家。デビュー作である本書に「実話をもとにした小説である」と記したことから、著者の実体験なのではと大騒ぎとなった。刊行2か月後に著者が自殺。台湾社会を震撼させた。 文学好きな房思琪と劉怡婷は高雄の高級マンションに暮らす幼なじみ。美しい房思琪は、13歳のとき、下の階に住む憧れの五十代の国語教師に作文を見てあげると誘われ、部屋に行くと強姦される。異常な愛を強いられる関係から抜け出せなくなり、房思琪の心身はしだいに壊れていく…。房思琪が記した日記を見つけた劉怡婷は、5年に及ぶ愛と苦しみの日々の全貌を知り、ある決意をするが…。 一方、同じマンションの最上階の裕福な家庭に嫁いだ二十代の女性・伊紋の物語も同時に描かれる。伊紋は少女二人によく本を読んであげていた。だが実は夫からのDVに悩み、少女らに文学を語ることが救いとなっていたのだ。 人も羨む高級マンションの住民たちの実情を少女の純粋で繊細な感性によって捉えることで、社会全体の構造的な問題が浮かび上がってくる。過度な学歴社会、格差社会、権力主義の背後にある大人の偽善、隠蔽体質…。なぜ少女の心の声を大人が気づけなかったのか。文学の力とは何か。多くの問いを投げかける。( Amazon.com より引用) 作品情報 『房思琪(ファン・スーチー)の初恋の楽園』 著者:林奕含(リン・イーハン) 訳者:泉京鹿 発行年月日:2019年11月5日 出版社:白水社 房思琪(ファン・スーチー)の初恋の楽園 感想 ★★★★☆ 図書館本 訳者あとがきによれば、作者はこの作品を「『強姦犯を愛した女の子』の物語」だと語ったらしい。 …これは一体どういう意味だろう? 主人公・房思琪(ファン・スーチー)は自分をレイプした李国華(リー・グォホァ)を本当に愛しているわけじゃない。 愛し...

【単行本】夕木春央(2022)『方舟』講談社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:夕木春央 発行年月日:2022年9月6日 出版社:講談社 9人のうち、死んでもいいのは、――死ぬべきなのは誰か?大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。生贄には、その犯人がなるべきだ。――犯人以外の全員が、そう思った。タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。 ( Amazon.com より引用)

【文庫本】田中芳樹(2007)『銀河英雄伝説1 黎明篇』東京創元社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:田中芳樹 発行年月日:2007年2月23日 出版社:東京創元社 銀河系に一大王朝を築きあげた帝国と、民主主義を掲げる自由惑星同盟が繰り広げる飽くなき闘争のなか、若き帝国の将“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラムと、同盟が誇る不世出の軍略家“不敗の魔術師”ヤン・ウェンリーは相まみえた。この二人の智将の邂逅が、のちに銀河系の命運を大きく揺るがすことになる。日本SF史に名を刻む壮大な宇宙叙事詩、星雲賞受賞作。 ( Amazon.com より引用)

【文庫本】田中芳樹(2017)『蛇王再臨:アルスラーン戦記13』光文社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:田中芳樹 発行年月日:2017年11月20日 出版社:光文社 王都へと急ぐ女騎士・エステルら一行が雨で足止めされた町に、魔軍の怪物たちが襲来する。その窮地に現れたのが、ダリューンらパルス精鋭軍だった。ついに並び立つ十六翼将。だが、魔の山デマヴァントの地底では、蛇王ザッハークが縛めを解かれ、自由の身になろうとしていた。さらに、深傷を負ったエステルの運命は!?衝撃的展開をみせるシリーズ第十三弾! ( Amazon.com より引用)

【文庫本】田中芳樹(2016)『魔軍襲来:アルスラーン戦記11』光文社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:田中芳樹 発行年月日:2016年8月20日 出版社:光文社 王都エクバターナの街で、アルスラーンとエラムが魔物に襲われる。蛇王ザッハークの魔の手は確実に忍び寄っていた。一方、ミスル国で玉座を狙い雌伏するヒルメスは、美しき孔雀姫・フィトナと運命的に出会う。彼女の腕には謎の銀の腕環が…。そして魔の山デマヴァントに閉じこめられたクバードたちの運命は!?パルスの新たな歴史が動きだすシリーズ第十一弾! ( Amazon.com より引用)

【文庫本】田中芳樹(2015)『旌旗流転:アルスラーン戦記9』光文社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:田中芳樹 発行年月日:2015年12月20日 出版社:光文社 仮面兵団に侵攻されたシンドゥラ国が援軍を求めてきた。アルスラーンは、ナルサスの助言を受け、敵の意表を突く策をとる。それは、北側から迂回し、チュルク国境を突破するというものだった。作戦は功を奏し、パルス軍は勝利の進撃を続けるのだが…。ついに迎えるヒルメスとダリューンの一騎打!さらにファランギースの悲しい過去が明かされるシリーズ第九弾! ( Amazon.com より引用)

【文庫本】田中芳樹(2015)『仮面兵団:アルスラーン戦記8』光文社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:田中芳樹 発行年月日:2015年6月20日 出版社:光文社 アルスラーンが即位して三年。十八歳の若き国王の下、パルスの国情は安定し、着実に国力を盛り返しつつあった。だが、奴隷制度を廃止した「解放王」に対して、特権を失った旧名門貴族たちの間には遺恨が拡がっていた。さらに、ミスルやチュルクなどの隣国も、パルスへの野心をむき出しにし始める。さらなる波乱を予感させる、大ヒットシリーズ第二部が堂々開幕! ( Amazon.com より引用)

【文庫本】田中芳樹(2014)『王都奪還:アルスラーン戦記7』光文社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:田中芳樹 発行年月日:2014年12月20日 出版社:光文社 王都エクバターナを巡る最後の決戦の火蓋が切られた。パルス軍十万に対して、王都東方で迎え撃つルシタニア軍は二十万。しかし、勢いの違いは明らかだった。侵略者は撃退され、王都城門が開かれる。だがそれは、アンドラゴラス王とヒルメス王子との雌雄を決する対決の始まりでもあった―。ついにアルスラーン出生の秘密が明かされる、感動の第一部完結編。 ( Amazon.com より引用)

【文庫本】小学館文庫編集部編(2021)『超短編!大どんでん返し』小学館

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 編者:小学館文庫編集部 発行年月日:2021年2月10日 出版社:小学館 2000字で世界が反転する!驚愕の30編。アイドルの握手会に参加したファン、テレビ番組でパンダと対決することになった肉体派タレント、完璧な密室を作り上げた推理小説作家――人々を待つ運命とは?2000字、原稿用紙5枚分の“超”短編小説で、“大どんでん返し”に挑む。小説誌「STORY BOX」の人気企画をオリジナル文庫化。ミステリー、ホラーから歴史小説まで、多彩な30編!【執筆者】青崎有吾、青柳碧人、乾 くるみ、井上真偽、上田早夕里、大山誠一郎、乙一、恩田 陸、伽古屋圭市、門井慶喜、北村 薫、呉 勝浩、下村敦史、翔田 寛、白井智之、曽根圭介、蘇部健一、日明 恩、田丸雅智、辻 真先、長岡弘樹、夏川草介、西澤保彦、似鳥 鶏、法月綸太郎、葉真中 顕、東川篤哉、深緑野分、柳 広司、米澤穂信(五十音順・敬称略) ( Amazon.com より引用)