地方社会の閉鎖性を浮き彫りにする一冊――窪田新之助『対馬の海に沈む』
ノンフィクションを読み終えて、「うわ、マジか」と声が漏れた作品は久しぶりでした。
著者:窪田新之助
発行年月日:2024年12月10日
出版社:集英社
図書館本
舞台は人口3万人の離島・対馬。そこで「JAの神様」と呼ばれた男・西山が、車ごと海に転落して死亡したことから物語は始まります。
44歳という若さ、そして死の背景にあった巨額の横領疑惑。
最初は単に、西山という一個人の転落劇かなと思って読み始めたのですが、ページをめくるうちに、これは個人の物語というより、JAという巨大組織の闇と、地方社会の閉鎖性を浮き彫りにする1冊なのだと分かりました。
中でも衝撃だったのは、西山が詐欺をするために「西山軍団」なるチームを作っていて、そこに西山の上司も取り込まれていたというエピソード。
西山の部下や後輩が不正に協力させられるのはまだ理解できるけど、上司でさえ不正に目をつぶらざるを得なかったとは…
なんで?って思うけど、読んでいると、JAの支店はそれだけ過酷なノルマを課せられていることが明らかになってきます。
西山の不正っていうのが、単に西山個人の成績のためだけでなく、支店の成績のためでもあるんですよね。
各支店に厳しいノルマが割り当てられ、でも西山が不正をして成績を水増ししてくれるおかげで他の職員はノルマから逃れられる…となると、そりゃ誰も不正を正そうなんて思わなくなりますよね。
しかも恩恵を受けていたのはJA職員だけでなく、住民も。
自分の口座を不正に使われているのに、住民は誰一人声を上げないのか?と疑問に思っていたら、住民側も、台風で罹災したことにして共済金を不正に受け取るなど、不正に加担するメリットがあったらしい。
JAという組織だけでなく、地域ぐるみの不正。
これでは、何年にも渡って不正が続いていたのも当然です。
地方のJAは縁故採用が多いらしく、それも不正を助長する一因かもしれません。
確か、不正を告発しようとした小宮氏は外部から異動でやって来た人(でしたよね?)。
もし私がJA職員、あるいは単に住民であったとして、今後もその地域で生活し続けることを考えると…不正を指摘できる自信はありません。
西山がやったことは当然許されるものではないですが、彼が「なぜ」不正をしたのかを考えると、単純に個人の問題として片づけられない、複雑な感情が湧いてきます。
彼の死は、私たちの「見て見ぬふり」が積み重なった結果なのだと思うと、決して他人事ではない。そう思って、しばらく胸の奥がざわざわしていました。
西山軍団
自爆営業
人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………? 職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。 (Amazon.com より引用)
作品情報
『対馬の海に沈む』著者:窪田新之助
発行年月日:2024年12月10日
出版社:集英社
![]() |
感想
★★★★☆図書館本
舞台は人口3万人の離島・対馬。そこで「JAの神様」と呼ばれた男・西山が、車ごと海に転落して死亡したことから物語は始まります。
44歳という若さ、そして死の背景にあった巨額の横領疑惑。
最初は単に、西山という一個人の転落劇かなと思って読み始めたのですが、ページをめくるうちに、これは個人の物語というより、JAという巨大組織の闇と、地方社会の閉鎖性を浮き彫りにする1冊なのだと分かりました。
中でも衝撃だったのは、西山が詐欺をするために「西山軍団」なるチームを作っていて、そこに西山の上司も取り込まれていたというエピソード。
西山の部下や後輩が不正に協力させられるのはまだ理解できるけど、上司でさえ不正に目をつぶらざるを得なかったとは…
なんで?って思うけど、読んでいると、JAの支店はそれだけ過酷なノルマを課せられていることが明らかになってきます。
西山の不正っていうのが、単に西山個人の成績のためだけでなく、支店の成績のためでもあるんですよね。
各支店に厳しいノルマが割り当てられ、でも西山が不正をして成績を水増ししてくれるおかげで他の職員はノルマから逃れられる…となると、そりゃ誰も不正を正そうなんて思わなくなりますよね。
しかも恩恵を受けていたのはJA職員だけでなく、住民も。
自分の口座を不正に使われているのに、住民は誰一人声を上げないのか?と疑問に思っていたら、住民側も、台風で罹災したことにして共済金を不正に受け取るなど、不正に加担するメリットがあったらしい。
JAという組織だけでなく、地域ぐるみの不正。
これでは、何年にも渡って不正が続いていたのも当然です。
地方のJAは縁故採用が多いらしく、それも不正を助長する一因かもしれません。
確か、不正を告発しようとした小宮氏は外部から異動でやって来た人(でしたよね?)。
もし私がJA職員、あるいは単に住民であったとして、今後もその地域で生活し続けることを考えると…不正を指摘できる自信はありません。
西山がやったことは当然許されるものではないですが、彼が「なぜ」不正をしたのかを考えると、単純に個人の問題として片づけられない、複雑な感情が湧いてきます。
彼の死は、私たちの「見て見ぬふり」が積み重なった結果なのだと思うと、決して他人事ではない。そう思って、しばらく胸の奥がざわざわしていました。
西山軍団
![]() |
自爆営業
![]() |


