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社会の圧力に飲み込まれた一人の女性――平路「モニークの日記」(呉佩珍ほか編『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』所収)

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文学作品としては表題作・陳雪「蝶のしるし」が抜きん出ていたなーと思ったけど、個人的には平路「モニークの日記」がめちゃくちゃ刺さりました! 複数形の、台湾文学。 恋愛結婚と出産を経て、幸せな家庭を手にしたはずの主人公が、「よき娘」「よき妻」を演じてきた人形のような過去に別れを告げ、同性への愛に生きる決心をする……その後の台湾レズビアン文学に大きな影響を与えた表題作「蝶のしるし」のほか、女性作家の小説全八篇を収録。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』 著者:江鵝、章緣、ラムル・パカウヤン、盧慧心、平路、柯裕棻、張亦絢、陳雪 訳者:白水紀子 編者:呉佩珍、白水紀子、山口守 発行年月日:2021年12月20日 出版社:作品社 収録作品 江鵝「コーンスープ」 章緣「別の生活」 ラムル・パカウヤン「私のvuvu」 盧慧心「静まれ、肥満」 平路「モニークの日記」 柯裕棻「冷蔵庫」 張亦絢「色魔の娘」 陳雪「蝶のしるし」

孤独と抵抗を静かに語る言葉たち――劉霞(リュウ・シア)『毒薬』(劉燕子・田島安江訳・編)

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この本が発売された2018年3月時点では著者はまだ北京で軟禁状態に置かれていたようですが、同年7月に軟禁を解かれドイツへ出国。 さらに今年7月からは日本に滞在しているそうで… 『私は外務省の傭われスパイだった』 を読んだばかりということもあって、日本も危ないんじゃ?と心配になってしまいます。 劉霞から劉暁波へ、詩集『牢屋の鼠』への返歌。 一匹の魚、一羽の鳥となった劉暁波への切なくかなわぬ恋文。 劉暁波に与え続けた同志としてのエール。 劉暁波亡きあとも生きるための薬である。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『毒薬』 著者:劉霞 訳・編者:劉燕子・田島安江 発行年月日:2018年3月2日 出版社:書肆侃侃房

夕方が一日でいちばんいい時間なんだ――カズオ・イシグロ『日の名残り』(土屋政雄訳)

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平凡で、真面目で、ロマンチストで…自らの執事としての「品格」を疑うことなく生きてきたスティーブンス。 きっと第二次世界大戦以前の、大英帝国がまだ栄華を誇っていた時代であれば、そのまま何の疑問も抱かずに生き抜くことができたのでしょう。 でも、戦争の終結とともに社会構造が大きく変わり、変わりゆく時代について行けず取り残されようとしている。しかもそのことに気づいた今、自分は老い始めている。 なんて恐ろしいんだろう。 品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々-過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。 ( 楽天ブックス より引用) 作品情報 『日の名残り』 著者:カズオ・イシグロ 訳者:土屋政雄 発行年月日:1990年7月77日 出版社:中央公論社

人間性とアンドロイド性――フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(浅倉久志訳)

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虫を見つけたら問答無用で殺虫剤を振りかける私でさえ、プリスがクモの脚を切断するシーンには打ちのめされました。 イジドアと接することで、ひょっとしてアンドロイドたちにも思いやりの気持ちが芽生えるのかな?と思った矢先だっただけに。 第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界! リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作。 35年の年を経て描かれる正統続篇『ブレードランナー2049』キャラクター原案。( Amazon.com より引用) 作品情報 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 著者:フィリップ・K・ディック 訳者:浅倉久志 発行年月日:1977年3月15日 出版社:早川書房 アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) 感想 ★★★★☆ 図書館本 訳者あとがきで、後藤将之氏の論評が引用されていて、そこに    人間もアンドロイドも、ともに、親切な場合もあれば、冷酷な場合もある。ディックが描こうとしたのは、すべての存在における人間性とアンドロイド性との相剋であって、それ以外のなにものでもない。 と書いてあるのを読んで、まさにその通りだなと感じました。 人間であるイジドアは逃亡アンドロイドに最初から親切だったけど、同じく人間であるレッシュは、死を目前にしたアンドロイドに本を読むわずかな時間さえ許さず殺してしまうくらい冷酷な人物として描かれています。 でも、全ての登場人物が「親切」と「冷酷」に二分されているわけではないですよね。 最初はアンドロイドや模造動物のことなんてただの機械としか思っていなかったリックが、次第にアンドロイドに同情を示すようなったり、感情移入できない存在として描かれていたレイチェルがリックに恋愛感情に似たものを抱くようになったり。 「親切」と「冷酷」、どちらも合わせ持つのが人間で、私たちは人間にもアンドロイドにも、ち...

コリンズのプロポーズは必見――ジェイン・オースティン『自負と偏見』(小山太一訳)

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エリザベス、リジー、イライザ… これだけで十分ややこしいのに、ミス・エリザベスと呼ばれたかと思えばミス・ベネットと呼ばれたり。 呼び名の他に、親戚関係もこんがらがる。 登場人物表をつけてくれ~! 恋心か打算か。幸福な結婚とは?軽妙なストーリーに織り交ぜられた普遍の真理。 永遠の名作、待望の新訳!解説・桐野夏生。 イギリスの静かな田舎町ロングボーンの貸屋敷に、資産家ビングリーが引っ越してきた。ベネット家の長女ジェインとビングリーが惹かれ合う一方、次女エリザベスはビングリーの友人ダーシーの気位の高さに反感を抱く。気難しいダーシーは我知らず、エリザベスに惹かれつつあったのだが……。幸福な結婚に必要なのは、恋心か打算か。軽妙な物語(ストーリー)に、普遍の真理を織り交ぜる。( Amazon.com より引用) 作品情報 『自負と偏見』 著者:ジェイン・オースティン 訳者:小山太一 発行年月日:2014年7月1日 出版社:新潮社 自負と偏見 (新潮文庫) 感想 ★★★☆☆ 図書館本 この作品を初めて読んだのは確か高校生のとき。 そのときは、家柄は大したことないけど綺麗で賢い女性が、一見傲慢だけど実は心優しいイケメン紳士に見初められ玉の輿に乗る…という少女漫画的な展開にときめいたりしたけど、今読むとストーリー自体にはそれほど惹かれなかったな。 それよりも、描写が生き生きしていて、登場人物の性格とか関係性が手に取るように分かる。 その表現の上手さに魅了されました。 冒頭のベネット夫妻の会話がまず見事ですもんね。 昔は、ミセス・ベネットの俗物ぶりを軽蔑し、ミスター・ベネットのウィットに富んだセリフを面白く読んでいましたが、改めて読むとミスター・ベネットの父親としての責任感の無さに腹が立つな。 ミセス・ベネットにとっては自分と娘たちの生活がかかってるから少しでも有利な結婚をさせようと必死なのに夫はどこ吹く風…ときたら、そりゃヒステリーも起こしたくなるってもんです。 人物紹介だけでなく、夫婦間で価値観が一致していないとこんなに不幸だぞ~ということもこの会話に示されているように感じます。 この作品は脇役にもちゃんと個性があって、思いがけない動きをするから侮れません。 一番面白かったのが、ミスター・コリ...

強姦犯を愛した女の子?――林奕含(リン・イーハン)『房思琪(ファン・スーチー)の初恋の楽園』(泉京鹿訳)

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冒頭の比喩表現から凄い。 主人公の親友・劉怡婷(リュウ・イーティン)が、高級食材のナマコを便器の底のウンコに喩え、そのナマコを口に入れてから吐き出して「これってフェラチオみたい」と言う。 この描写だけで、意味も知らずにフェラチオという言葉を使うような年頃の少女に性行為を強要することのおぞましさが伝わってくる。 台湾で25万部突破! 台湾社会を震撼させた、実話にもとづく傑作長篇 著者は1991年生まれの女性作家。デビュー作である本書に「実話をもとにした小説である」と記したことから、著者の実体験なのではと大騒ぎとなった。刊行2か月後に著者が自殺。台湾社会を震撼させた。 文学好きな房思琪と劉怡婷は高雄の高級マンションに暮らす幼なじみ。美しい房思琪は、13歳のとき、下の階に住む憧れの五十代の国語教師に作文を見てあげると誘われ、部屋に行くと強姦される。異常な愛を強いられる関係から抜け出せなくなり、房思琪の心身はしだいに壊れていく…。房思琪が記した日記を見つけた劉怡婷は、5年に及ぶ愛と苦しみの日々の全貌を知り、ある決意をするが…。 一方、同じマンションの最上階の裕福な家庭に嫁いだ二十代の女性・伊紋の物語も同時に描かれる。伊紋は少女二人によく本を読んであげていた。だが実は夫からのDVに悩み、少女らに文学を語ることが救いとなっていたのだ。 人も羨む高級マンションの住民たちの実情を少女の純粋で繊細な感性によって捉えることで、社会全体の構造的な問題が浮かび上がってくる。過度な学歴社会、格差社会、権力主義の背後にある大人の偽善、隠蔽体質…。なぜ少女の心の声を大人が気づけなかったのか。文学の力とは何か。多くの問いを投げかける。( Amazon.com より引用) 作品情報 『房思琪(ファン・スーチー)の初恋の楽園』 著者:林奕含(リン・イーハン) 訳者:泉京鹿 発行年月日:2019年11月5日 出版社:白水社 房思琪(ファン・スーチー)の初恋の楽園 感想 ★★★★☆ 図書館本 訳者あとがきによれば、作者はこの作品を「『強姦犯を愛した女の子』の物語」だと語ったらしい。 …これは一体どういう意味だろう? 主人公・房思琪(ファン・スーチー)は自分をレイプした李国華(リー・グォホァ)を本当に愛しているわけじゃない。 愛し...

真実の愛はあるのか? ―― ロレンス『完訳 チャタレイ夫人の恋人』(伊藤整訳)

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正直、多様性の時代を生きている身としては「性愛がそんなに大事か!?」と疑問を呈したいところだけど。 当時の女性や労働者階級の人たちが置かれていた状況を考えると、性の解放を通して魂の自由を描いたこの作品は画期的だったろうな~と思います。 森番のメラーズによって情熱的な性を知ったクリフォード卿夫人―― 現代の愛の不信を描いて、「チャタレイ裁判」で話題を呼んだ作品。 コンスタンスは炭鉱を所有する貴族クリフォード卿と結婚した。しかし夫が戦争で下半身不随となり、夫婦間に性の関係がなくなったため、次第に恐ろしい空虚感にさいなまれるようになる。そしてついに、散歩の途中で出会った森番メラーズと偶然に結ばれてしまう。それは肉体から始まった関係だったが、それゆえ真実の愛となった――。 現代の愛への強い不信と魂の真の解放を描いた問題作。( Amazon.com より引用) 作品情報 『完訳 チャタレイ夫人の恋人』 著者:D・H・ロレンス 訳者:伊藤整 補訳:伊藤礼 発行年月日:1996年11月30日 出版社:新潮社 完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫) 感想 ★★☆☆☆ 図書館本 作品の舞台は第一次大戦後のイギリス。 冒頭でも書きましたが、生殖目的以外の性行為がタブー視されていた当時のキリスト教社会において、愛を確かめ合うための性行為を真正面から描いたことの衝撃は大きかったでしょう。 性と生への賛美は、読んでいて確かにひしひしと感じました。 雨の森を裸で駆け回るシーンやアンダーヘアに花を挿すシーンなんて滑稽で苦笑いしてしまいますが、それでも生命力にあふれていて割と好きだったりします。 ただなあ…。 コニーとメラーズの間に真実の愛なんてありますか? その点が引っかかって私の好みにはあまり合わない作品でした。 あらすじによると、二人は「肉体から始まった関係だったが、それゆえ真実の愛となった」らしい。 ……本当か? ただの性欲じゃないの?と思ってしまう私。 特にメラーズの方。 彼、元妻バーサ・クーツとの性生活をボロカスに言ってましたが、確か最初は彼女とのセックスにも満足していたんですよね? もちろん浮気されたことへの怒りがあるからだろうけど、身体の相性が悪くなったからって一度は愛した女性のこ...

【文庫本】W.ブルース・キャメロン(2012)『野良犬トビーの愛すべき転生』(青木多香子訳)新潮社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:W.ブルース・キャメロン 訳者:青木多香子 発行年月日:2012年7月1日 出版社:新潮社 兄弟姉妹に囲まれ、野良犬としてこの世に生を受けた僕。驚くことに生まれ変わり、少年イーサンの家に引き取られ、ベイリーと名づけられる。イーサンと喜びも悲しみも分かち合って成長した僕は、歳を取り幸福な生涯を閉じる。ところが、目覚めると、今度はメスのエリーになっていた!警察犬として厳しい訓練を受け、遭難した少年の救助に命がけで向かうが…。全米ベストセラー。 ( Amazon.com より引用)

【文庫本】アーサー・コナン・ドイル(2010)『緋色の研究』(深町眞理子訳)東京創元社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:アーサー・コナン・ドイル 訳者:深町眞理子 発行年月日:2010年11月30日 出版社:東京創元社 異国への従軍から病み衰えて帰国した元軍医のワトスン。下宿を探していたところ、同居人を探している男を紹介され、共同生活を送ることになった。下宿先はベイカー街221番地B、相手の名はシャーロック・ホームズ―。永遠の名コンビとなるふたりが初めて手がけるのは、アメリカ人旅行者の奇怪な殺人事件。その背後にひろがる、長く哀しい物語とは。ホームズ初登場の記念碑的長編。 ( Amazon.com より引用)

【文庫本】ドイル(1992)『シャーロック・ホームズ傑作選』(中田耕治訳)集英社

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:ドイル 訳者:中田耕治 発行年月日:1992年11月25日 出版社:集英社 ミステリー界のスーパースター、シャーロック・ホームズ。ロンドンを舞台に鮮やかな推理力と機敏な行動力で難事件を次々と解決する。赤毛の男を募集する、という新聞広告の謎を追う「赤毛連盟」、自ら生命の危険をおかし、真相に迫る「まだらの紐」など、6つの怪事件に挑む名探偵ホームズの大冒険。 ( Amazon.com より引用)

【文庫本】アガサ・クリスティー(2010)『そして誰もいなくなった』(クリスティー文庫80)青木久惠訳,早川書房

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 著者:アガサ・クリスティー 訳者:青木久惠 発行年月日:2010年11月15日 出版社:早川書房 その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く…そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。新訳決定版。 ( Amazon.com より引用)

【単行本】シェイクスピア作,エドマンド・デュラック絵(1994)『テンペスト』(伊東杏里訳)新書館

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※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。 作品情報 原作:ウィリアム・シェイクスピア 挿絵:エドマンド・デュラック 訳者:伊東杏里 発行年月日:1994年9月15日 出版社:新書館 弟に追放された老いた国王と美しい姫が、魔法の島で再び仇敵とめぐり合い、妖精たちの協力によって、和解しついに結婚。やがて嵐のあとの穏やかな海を順風にのって帰帆します。老国王の魔術、若者たちのロマンス、妖精エアリエルの活躍……。シェイクスピアの代表作をデュラックの夢幻的な色彩がひきたてます。カラー絵32点。解説/荒俣宏。 ( Amazon.com より引用)