【文庫本】アガサ・クリスティー(2010)『そして誰もいなくなった』(クリスティー文庫80)青木久惠訳,早川書房


※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:アガサ・クリスティー
訳者:青木久惠
発行年月日:2010年11月15日
出版社:早川書房
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が響く…そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく!強烈なサスペンスに彩られた最高傑作。新訳決定版。 (Amazon.com より引用)

感想

★★★☆☆
図書館本

互いに面識のない男女十人が孤島に閉じ込められ、童謡の歌詞になぞらえて一人、また一人と殺されていく……。
今では使い古された感のある設定ですが、読んでいてちっとも古臭さを感じなかったのは、この作品が名作たる所以でしょうか。
なんか文章は淡々としているのに、とってもハラハラさせられて、ページをめくる手が止まらなかったです。

登場人物同士は互いに面識がないということだったけど、マッカーサー将軍とミス・ブレントには共通の友人がいたり、アームストロング医師は夢の中でミス・ブレントを殺そうとするなど彼女に殺意を抱いているような描写がありました。
こんなふうに集められた十人は何かしら繋がってそうだったから、実は暴かれた過去の出来事において彼らは互いに加害者であり被害者だったんじゃないか?それが判明したから殺し合いになったんじゃないか?と考えていたのですが……全然違いました( ̄▽ ̄)

それにしても、ウォーグレイヴ判事の告白文は信用していいんだろうか?
判事が裁いたシートンの有罪を裏付ける動かせない証拠が出てきたのは、彼の死刑執行後。
死んだ後なら証拠なんてどうにでもできたんじゃ……?と疑ってしまうなあ。

あと、判事は法律の及ばない事件を裁いたというけど、私はミス・ブレントの件だけはどう考えても法律云々関係なく彼女に罪はないと思うんだけどなー。
お手伝いの娘の妊娠は、当時としては実の両親でさえ見限るほどの不良行為だったんでしょ?そんな娘を、赤の他人である彼女が雇い続ける理由なんてないじゃんか。
彼女のしたことが殺されるほどの罪に値するというのなら、彼女がどんな言動でその娘を自殺にまで追いやったのか、ちゃんと描いてほしかったです。
ひどいのは孕ませた男の方だろ!と、使用人を解雇しただけで殺された彼女を気の毒に思ったのでした。


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↓アガサ・クリスティー関連の本をご紹介♪
アガサ・クリスティー『バートラム・ホテルにて』(クリスティー文庫44)
アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』(クリスティー文庫80)

アガサ・クリスティー原作,マイケル・モートン脚本『アリバイ』(海外ミステリ叢書「奇想天外の本棚)
北野佐久子(2019)『イギリスのお菓子とごちそう―アガサ・クリスティーの食卓』





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