【単行本】伊吹有喜(2018)『天の花:なでし子物語』ポプラ社
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:伊吹有喜発行年月日:2018年2月10日
出版社:ポプラ社
|
感想
★★★★☆図書館本
『なでし子物語』と『地の星:なでし子物語』をつなぐ物語。
前の2作は耀子の成長物語として勇気をもらいましたが、今作は恋愛小説、それもとびきり切ない恋の物語という印象で、胸がいっぱいになりました。
前作を読んだときは、なぜ耀子が年の離れた龍治と結婚したのか、はっきりとは描かれていなかったのでもやもやしましたが……
今作を読めば、耀子が立海の手を取らずに龍治を選んだ理由がよく分かります。
前作の耀子は自ら将来への道を切り開くまでに成長したけれど、すでに28歳の大人でした。
でも今作ではまだ高校生で、誰かの庇護がないと生きていくことすら難しい状況ですものね。
立海と新しい世界に踏み出すより、龍治の腕の中で、そのぬくもりに溺れていたいと耀子が思うのも無理はない。
耀子が「大切に思われてるって、どういうことかよくわかりません」と言っていたけど、それは龍治も同じなんだろうな。
親の愛情を知らずに育った二人。孤独な似た者同士。
そしてそれは立海も同じだけど……この二人と立海とでは、やっぱりどこか違いますよね。
少なくとも立海は親父様の寵愛を一身に受けて、上屋敷という立派な後ろ盾があって……
何よりまだ幼いから自分の気持ちに素直でいられるし。
「大切に思われる」ことを知らない二人にとって、立海の天真爛漫さは眩しすぎる。
耀子と龍治だってあんなにも周りの人から大切に思われているのに、二人ともどうしてそれに気付かないの?って少し腹立たしくも思うけど、子どものころに親の愛情を知らずに育つと、自分を卑下してしまうのかもしれない。
照子の言葉を借りれば、結婚とは「本音を言い合える相手を作ること。互いに唯一の味方になれること。」
だとしたら……
龍治は耀子と一緒になって安らぎを得たのかもしれない。けど、耀子は……?本当にそれで幸せなの?と問いたくなる。
前作を読んで今後の展開が分かっているだけに、婚礼前夜の立海の取り乱した様子とエピローグを読むのが辛くて悲しくて。
立海にもいい人が現れたらいいなと思いつつ、まだまだ耀子だけの立海でいてほしいとも思ったり(^^;)笑
どうやらシリーズ第4作目『常夏の光:なでし子物語』が雑誌で連載中らしいので、耀子も立海も龍治も……全員にとって佳き方向へ進むよう祈らずにはいられません。
にほんブログ村
↓「なでし子物語シリーズ」感想
『なでし子物語』
『地の星:なでし子物語』
『天の花:なでし子物語』
↓伊吹有喜さんの作品ならこちらもおすすめ
『カンパニー』
Renta!:転生幼女はあきらめない5