【単行本】アガサ・クリスティー原作,マイケル・モートン脚本(2019)『アリバイ』(海外ミステリ叢書「奇想天外の本棚)山口雅也訳,原書房
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:アガサ・クリスティー(原作)、マイケル・モートン(脚本)訳者:山口雅也
発行年月日:2019年6月20日
出版社:原書房
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感想
★★★☆☆図書館本
アガサ・クリスティーの名作『アクロイド殺し』を戯曲化したこの『アリバイ』という作品。
『アクロイド殺し』と言えばクリスティーの代表作の一つですよね。
なので多くの人が犯人もトリックも知っている状態でこの本を読むことになるのでしょうが……
実は私が『アクロイド殺し』に触れたのは、三谷幸喜氏がこれを翻案したドラマ『黒井戸殺し』が初めて。
医者が犯人だったことにとにかく驚き、大泉洋さんと斉藤由貴さんの演技も相まって、あの悲しい結末に胸が痛くなりました。
ただ、その後、原作小説を図書館で借りてきて読んだものの、ドラマのラストの印象が強すぎて、小説の内容はあまり覚えていないんですよね(汗)
そんなわけで、医者が犯人、ということ以外は何も知らない状態でこの『アリバイ』に臨みました。
私は「戯曲」というもの自体、読むのはこれが初めて。
観劇は趣味の一つなので、セッティングの状況や登場人物の動作(○○、下手より登場……etc)がト書きで表現されているのが興味深かったです。
この作品、実際に劇場で見てみたいな~
ストーリーについては、読み進めていくうちにだんだん原作小説と三谷ドラマの内容も思い出されてきたものの、やはり名作と言われるだけあって、内容を分かったうえで読んでも面白いものですね!人間ドラマとしても惹かれました。
私はフローラ嬢がすごく好きだなあ。美人の令嬢というだけでも好きになる要素ばっちりなのですが、彼女がアクロイド氏のお金を盗んだと告白したときの気高さといったら……!
「いまはとにかく、真実の自分を取り戻したのです。」と言ったフローラ嬢、素敵でした。
そして犯人のシェパード医師にもゾクゾクさせられました。
ラルフを庇っているように見せかけて、本当は自分のためなんだもんなあ。
ポアロが真実を明らかにする場面はドキッとしましたよ。
一つ分からないのが、シェパード医師のそもそもの動機。
アクロイド氏を殺したのは、フェラーズ夫人を恐喝していたことを氏に知られそうになったから、ですよね。
じゃあ、なぜ彼はフェラーズ夫人を恐喝していたの?と私の頭の中はハテナでいっぱい。別にお金に困っている風でもないのに。
三谷ドラマでは確か、カリルにあたる彼の姉(斉藤由貴さん!素晴らしかった!)が病気のため余命僅かで、その治療のためにお金が要るから……とかだったと思うのですが。
この本では???原作小説もどうだったか覚えてないや。
姉の病気と言えば、ポアロは最後、シェパード医師にカリル(この本では妹)のためだと言って自殺を促すわけですが……
ドラマと違ってカリルが生き続けるなら、シェパード医師が自殺したら犯人はほぼ彼に決定でしょう?
カリルは殺人犯の兄を持って肩身の狭い思いをすることになるんじゃ……なぜ自殺することがカリルのためになるの??
……なんだかモヤモヤしてきたぞ。
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