【単行本】久坂部羊(2020)『怖い患者』集英社
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:久坂部羊発行年月日:2020年4月10日
出版社:集英社
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感想
★★★★☆図書館本
「怖い患者」って、いわゆるモンスターペイシェントのことを言っているのかと思っていたけれど…
この本の「怖い患者」はそんなもんじゃなかった。本当に怖い。ちょっと『世にも奇妙な物語』ぽいかも。
天罰あげる
初っ端から後味の悪い話だったなあ(^^;)
同僚が自分の悪口を言っているのを聞いて発作を起こした愛子。
明らかにパニック障害なのに、それを認められずどんどん精神を病んでいく愛子の姿が描かれていたから、「最初は普通の子だったのに、ひとたび病気になると、こんなにも簡単に壊れてしまうのねー」と、病気が進行していく様子を辛いような悲しいような気持ちで読んでいたけど…
あのラストはつまり…愛子は徐々に病んでいったんじゃなくて、最初からおかしかったってこと???
面白かったけどよく分からなかった。何にせよ怖い。
蜜の味
「他人の不幸は蜜の味」を地で行く美人女医の話。我ながら最低だと思うけど、その気持ちは分かる(笑)
どこまでが現実で、どこまでが妄想なんだろう。
ご主人さまへ
これもよく分からない話だったなあ。
アルミニウムを気にするあまり、マグネシウムとセレニウムを過剰摂取しておかしくなっていった…という解釈でいいんだろうか?
それとも、妊娠したせいで安定剤を飲めなくなったということだったから、やっぱり元からおかしかったのか?
最初は、夫が妻を殺そうとして有害ミネラルを少しずつ摂取させてるんだな…と思っていたけど、そういうわけではないみたいだし。
あの手紙がちゃんと存在しているってことは、それを書いた人もいるんだよね?それも妄想?
うーん、読解力低め人間には分からん。
老人の園
これ面白かった!
老人たちが施設長を恨んでいるのは早い段階から伝わってきたからオチは読めたけど、てっきり利用者が次々死ぬことで施設の評判を落として、社会的な死をもたらす作戦かと思っていました。本当に殺すとは…。
しかし、あんな揉め事だらけのデイサービスなんて嫌だわ~~。でも実際にありそう~~。
利用者側からすれば、施設長の態度はただの事なかれ主義にしか見えないだろうね。私も読んでいてそう感じたもの。ラストはちょっと爽快だと思ってしまった。
でも施設長の立場になって考えたら、利用者同士のトラブルなんかいちいち構ってられるかって感じよね。難しいなあ。
注目の的
どんでん返しにやられました!一番好きかも。
集団訴訟まで起こそうというときに自分は被害者じゃなかったと判明するなんて…
恥ずかしいやら情けないやらで、私でも本当に病気になってしまいそう(汗)
「病気が利益をもたらすことがある」かあ。なるほどねー。
病気になったことで、嫌な仕事を休めたり、周囲から優しくしてもらえたり…
「疾病利得者」という言葉は初めて知ったけど、そりゃそういうこともあるだろうなーと思いました。
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