日本人はもっと魚を食べよう――川本大吾『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』

子どものころ、間違ってサンマのはらわたを食べてしまったせいで、大のサンマ嫌いになった私。
小骨も多くて食べにくいし、どうしてこんな魚が秋の味覚として人気なのかサッパリ理解できなかったなー。
大人になってようやく美味しさが分かるようになったというのに、肝心の「美味しいサンマ」は消えてしまったという…

深刻な大不漁、超高値、外国産のシェア拡大――。取材歴30年以上の「さかな記者」が明かす、日本の漁業・水産業が衰退している訳。 (Amazon.com より引用)

作品情報

『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』

著者:川本大吾
発行年月日:2023年12月20日
出版社:文藝春秋

感想

★★★☆☆
図書館本

何が衝撃って、私たちがいま食べているサンマは「以前なら缶詰にもならない、養殖魚などの餌に回されていたような小さなサイズのサンマばかり」ということ。
確かに、スーパーで売られているサンマを見て「年々痩せていくな」とは思っていたけれど、まさか飼料用レベルだったとは…!

本書ではサンマ不漁の原因が様々な視点から解説されています。
主な原因は、地球温暖化に魚食文化の世界規模での拡大、資源管理の遅れ。どれもこれまでに散々言われてきたことで、新しい学びはなかったけれど、サンマが獲れなくなったのは複雑な要因の積み重ねだと改めて思い知らされました。

ただ、暗い話ばかりかというとそうでもなくて。
どうやらサンマというのは適切な資源管理をすれば回復可能な魚らしく、国際的な協力体制が整えば未来に希望はありそうです。
つまり、いまどう行動するかで、サンマの未来は変わるということ。

まあ、それが一筋縄ではいかないということは本書に書かれていた通りですが…。

漁師や研究者の声も紹介されていて、彼らがどれほど現場で奮闘しているかも伝わってきました。
資源保護の他にも、流通・消費にも問題は山積み。
どんなに美味しい魚が獲れたところで、買う人がいなければ商売にはならないわけで…。
結果、スーパーに並ぶのは、質よりも消費者の人気や安さ重視で選ばれた魚ばかり。そして、スーパーの魚は下処理しないと売れないので値が高くなる、という負のスパイラル。
私たち消費者にも責任があるのだと感じさせられました。

せめて「もっと国産の、それも丸のままの魚を食べよう」と思いました。
安さや便利さに流されて、つい輸入品の冷凍魚や切り身を選んでしまいがち(というか、スーパーにそれしか並んでない)ですが、もし国内の漁業が立ち行かなくなったら、サンマに限らず私たちの食卓から多くの魚が消えてしまうかもしれません。それは悲しすぎる。
食べる側の選択も、資源を守る大事な一歩かもしれません。



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