シモネタ多めで飽きるが、刺さる話は強烈に刺さる――京極夏彦他『ひどい民話を語る会』

面白くないわけじゃないけど…
ウンコとオナラの話ばかりでさすがに飽きたな。

荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ!

「囲炉裏端にはコンプライアンスもポリティカル・コレクトネスもないんです。そして――。ひどい民話が誕生するんです」京極夏彦(「はじめに」より)

「桃太郎」の冒頭でお爺さんは柴刈りに、お婆さんは洗濯に行く。その理由とは……?
メジャーな昔話の陰には数々の「ひどい民話」が埋もれている。
妖怪を愛好する面々が縦横無尽に語る、知られざる民話の世界。
全国各地から選りすぐりの民話を紹介する、伝説的トークイベント「ひどい民話を語る会」が、満を持して書籍化!
学問としても芸術としても敬遠され、表舞台からパージされてきた荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ。

※下品な話が苦手な方はご遠慮ください。 (Amazon.com より引用)

作品情報

『ひどい民話を語る会』

著者:京極夏彦、多田克己、村上健司、黒史郎
発行年月日:2022年10月28日
出版社:KADOKAWA

感想

★★★☆☆
図書館本

いったいどれほど「ひどい」のかと期待しながら読み始めたのですが、特にオチもない、ただただ下品な話が続くだけだったので、読みながら「もういいよ!」と思ってしまいました。
別に嫌いじゃないんだけど、バリエーションの少なさがネックだなと思いました。

そんな中で面白かったのが、茨城県の民話「ねぎに土を」。
とある村でお殿様がうどんを食べようとして、村人に「(薬味の)ネギをよこせ」って命じるんだけど、村人たちは誰一人ネギを知らないので、神社の神主の「禰宜(ねぎ)」と勘違いしてお殿様のところに連れてきてしまう、というお話。

これだけでも私はクスッと笑ってしまったのですが、この話が面白いのはここから。
実はお殿様の方は、しびれを切らして禰宜が到着する前にうどんを食べ終えてしまうんですよね。
でも、「やっとネギが来ました」という報告を受けたお殿様は、せっかくだからネギを城に持って帰ろうと思い立ち、「土を深く掘って(ネギを)植えとけ」と村人に命じる。村人は言われた通り、禰宜を首だけ出して畑に埋めてしまう。

…いやいや、ここで普通はおかしいと思うはずです。
でも村人たちは疑わない。

しかもまだ続きがあって、翌朝、村人が禰宜の様子を確認しに行くと、一晩土の中に埋められていたものだから、禰宜は真っ青で今にも死にそうな様子。
あわててお殿様に「禰宜が真っ青になってます」と報告したところ、お殿様は「ネギは白に限る。もっと土をかけろ」と。
村人はまたもや言われた通りに土をかぶせましたとさ。おしまい。

………

えーっ!禰宜、生き埋めにされちゃったよ!
黒史郎さんが「とどめを刺しちゃったんですね(笑)」と言うように、この話はちゃんとオチがあるのがいいです。
なされるがままの禰宜が気の毒で面白くて、この「ひどさ」が私にぶっ刺さりました。

この他に、「カチカチ山」の復讐劇につながらずただ狸に食べられるだけのお婆さんの話(「婆汁」)や、両親を藁包に詰め込んで川に流してしまう人でなしの話(「嘘つき小僧」)は、ウンコ、オナラだらけの本書の中で異彩を放っていました。
好きな民話もあれば、そうでもない民話もいろいろありましたが、いずれもツッコミどころ満載の展開がクセになる。そんな一冊でした。
ぜひあなたもお気に入りの民話を見つけてみてはいかがでしょうか。



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ねぎに土を

ビオランテの沢口靖子みたいになっている

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