天才たちのレスバ合戦が面白すぎた――彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』
好きな作家がしょうもないことでバトルする姿…。
うーん、見たいような見たくないような。
文豪と呼ばれる大作家たちは、悪口を言うとき、どんな言葉を使ったのだろうか。
そんな疑問からできたのが、本書『文豪たちの悪口本』です。
選んだ悪口は、文豪同士の喧嘩や家族へのあてつけ、世間への愚痴など。随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました。これらを作家ごとに分類し、計8章にわたって紹介していきます。
川端康成に「刺す」と恨み言を残した太宰治、周囲の人に手当たりしだいからんでいた中原中也、女性をめぐって絶交した谷崎潤一郎と佐藤春夫など、文豪たちの印象的な悪口エピソードを紹介しています。
文豪たちにも人間らしい一面があるんだと感じていただけたら、うれしく思います。 (Amazon.com より引用)
作品情報
『文豪たちの悪口本』編者:彩図社文芸部
発行年月日:2019年6月21日
出版社:彩図社
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感想
★★★☆☆図書館本
「悪口」って自分とは全く関係ないことでも、なんとなくイヤな気持ちになるもの。
なのに、いざ他人が罵詈雑言の応酬を繰り広げていると知ると、ついつい覗き見したくなる。(私だけじゃないですよね?)
それが名だたる文豪たちのものとなれば、気になるのは当然というものでしょう。
本書には、太宰治からはじまり、夏目漱石や菊池寛、谷崎潤一郎らの、悪口を言ったり言われたりのエピソードがずらり。
個人的なやり取りをする手紙に相手への悪口を書くのはまだ分かるんだけど、雑誌に堂々と抗議文を載せて批判するんだから、素直というか大胆というか。
文豪と呼ばれる人たちなだけあって、悪口の中にも知性やユーモアを感じさせるのはさすがです。
特に雑誌に公開しているようなものは、単なる悪口というよりは、読者に読ませること前提で書いているでしょうから、一種の作品ですよね。
一方で、「谷崎潤一郎と佐藤春夫の書簡集」みたいに、手紙だと誤字が混じっていたり配達事情から行き違いになっていたりと、妙に生々しい感じ。
きっと感情のままに書いたんだろうな~と想像すると、文豪といっても、私たちと同じ人間なのね、と思わせてくれます。
正直、ちゃんと作品を読んだことのない作家も多かったのですが、それでも、その人となりや文学観が垣間見えて十分楽しめました。
特に中原中也は、昔、国語の授業で『汚れつちまつた悲しみに……』を読んで「ワケわからん」と思って以来敬遠していたので、破天荒ぶりを知って興味津々です。


青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって
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まるでお猿の親類見たいだ
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