【単行本】中山七里(2020)『合唱 岬洋介の帰還』宝島社



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:中山七里
発行年月日:2020年5月1日
出版社:宝島社
幼稚園で幼児らを惨殺した直後、自らに覚醒剤を注射した“平成最悪の凶悪犯”仙街不比等。彼の担当検事になった天生は、刑法第39条によって仙街に無罪判決が下ることを恐れ、検事調べで仙街の殺意が立証できないかと苦慮する。しかし、取り調べ中に突如意識を失ってしまい、目を覚ましたとき、目の前には仙街の銃殺死体があった。指紋や硝煙反応が検出され、身に覚えのない殺害容疑で逮捕されてしまう天生。そんな彼を救うため、あの男が帰還する―!! (Amazon.com より引用)




感想

★★★☆☆
図書館本

中山先生のデビュー10周年記念「12ヶ月連続刊行企画」の第4弾は、「さよならドビュッシーシリーズ」の新作。
『もういちどベートーヴェン』の天生くんのセリフはやっぱりフラグだったか……!
自分のコンサートを蹴って友人のピンチに駆けつけた岬先生の漢気に胸を打たれました。

弁護士の御子柴さんは、連ドラ化した同著者の「御子柴弁護士シリーズ」からの登場ですよね。
私はまだ読んでないし、ドラマも見てなかったので、彼が出てきたからどうこう……というのはないですが、なかなか面白そうな人物ではないですか!
御子柴弁護士シリーズはいずれ読もうと思っていたので、読むのが楽しみになりました。
多分、刑事さんとか法医学教室の教授とか、他の登場人物たちも中山先生の他作品から登場したキャラクターなんでしょうね。
だから『合唱』?
音楽描写や岬先生の見せ場が少なくて物足りない気もしましたが、面白かったですよ。

それに、今回は犯人を当てることができたので、ちょっとご機嫌です(笑)
だって執務室にいたのは、殺された仙街を含めて3人だけ。天生じゃないなら、宇賀事務官しかいないじゃんねえ。

しかし宇賀よ、天生はただ自分の仕事をしただけなのに。逆恨みはやめてくれ。
睡眠薬を盛られて意識を失っている間に犯人に仕立て上げられるなんて、考えるだけでも恐ろしいですよね。
濡れ衣を着せられ逮捕された天生の辛さや屈辱を思うと、宇賀にはちっとも同情できなかったです。

それにしても……刑法第39条、か。
私自身は、責任能力が有ろうが無かろうが、罪を犯したのが事実であれば、心神喪失者であっても他の人たちと同様に裁かれるべきだと考えています。
が、検事調べ中の仙街の言い分も、「確かに」と思ってしまいました。

「犯行時に心身喪失の状態だったかどうかはともかく、あなたは五人の人間の命を奪った」
「そうらしいな」
「せめてその事実くらいは認めたらどうだ。少なくとも五人への謝罪くらいにはなる」
「記憶にないものを認めて堪るか」

仙街は実際に人を殺していたわけだから、彼のはただ罪を回避したいが為の無責任な主張ですが、もし殺したのが彼じゃなかったら……?天生みたいに冤罪だったら……?
身に覚えのないことで責められても、反省のしようもないし、まして責任なんて取れないですよね。道理に合わない。
いろいろ考えさせられました。

とにかく岬先生が天生を助けてくれて良かった!

そういえば、自治体に予算がなくて司法解剖ができない、なんてことがあるんですか( ゚д゚)
そのことに一番ビックリしたわ。


さて、次回作は『おわかれはモーツァルト』(仮題)だそうで。
「おわかれ」ってことはもしかしてシリーズ最終作?
え、寂しい。



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『さよならドビュッシー』
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『要介護探偵の事件簿』
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