【単行本】中山七里(2010)『さよならドビュッシー』宝島社



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:中山七里
発行年月日:2010年1月22日
出版社:宝島社
ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な彼女の人生は、ある日突然終わりを迎える。祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、ただ一人生き残ったものの、全身火傷の大怪我を負ってしまったのだ。それでも彼女は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する――。 (Amazon.com より引用)




感想

★★★★☆
図書館本

『京の縁結び 縁見屋の娘』と同じく『このミステリーがすごい!』大賞の作品。

橋本愛ちゃんと清塚信也さんが出ていた映画版を数年前に見ていたので、内容は知っていました。

映画を見たときも感じたことですが、ミステリー色は薄め。
映画の方では入れ替わりトリックには全く気付かなかったのですが、小説の方は伏線が分かりやすすぎて、ミステリー小説としてはちょっと物足りなかったかも。
たぶんトリックを知らずに読んだとしても、入れ替わりにはすぐに気付いただろうなーと思います。
(岬先生が入れ替わりに気付く過程は、映画の方が自然で良かった。)

でも音楽スポ根ものの青春小説としてはすごく良かったです!
特にピアノ演奏の描写はとても丁寧で、気付けば頭の中で曲が再生されていたくらい。
私も高校卒業までピアノを習っていたことがあって、今も趣味で弾くので、遥=ルシアがリハビリを経てコンクールに挑戦する姿には胸が熱くなりました。
ルシアの幸せを願わずにはいられない(;_;)

……

まあ、突っ込みどころは多々ありましたけどね。
全身に大やけどを負って皮膚の移植までしたのに、回復早すぎだろ!という点は誰もが突っ込んだことでしょう。
完全に損傷が癒えたわけでもないのに、ショパンのエチュードが弾けるレベルまでの回復とは…( ̄▽ ̄;)

あと、お巡りさんがやってきて初めて遥の母の転落死を知ったかのようなルシアのあのセリフは正直ズルいと思いましたね。
自分が転落させたんだから知らないわけないじゃん(汗)


他にも突っ込みたいところはちょこちょこありますが、私が一番気になったのはルシアのそもそものピアノの技量について。
遥が「英雄ポロネーズ」を習っていたのに対して、ルシアは「チェルニーの練習曲」。

ピアノ経験者ならご存じでしょうが、チェルニーの練習曲って、こういう教本があって

ツェルニー30番練習曲 全音ピアノライブラリー


100番→30番→40番→50番→60番の順に難しくなっていきます。
趣味レベルのピアノなら30番、40番まで習えば十分ってところでしょうか。
熱心に練習する人でもせいぜい50番まででしょう。趣味のピアノで60番までやってる人に出会ったことないです。(ちなみに私は50番練習曲を数曲やったところでやめました。)

で、英雄ポロネーズなんて、私なんかじゃ一生かけても弾けるかどうか分からない難曲ですよ。

TVアニメ「ピアノの森」Piano Selection ショパン: ポロネーズ第6番 変イ長調 作品53 「英雄」


遥の付き添いでピアノを習っていただけのルシアが、遥に成りすまして、しかもコンクールで優勝するほど上手だとは到底思えないのですが……

それともアレかな。「チェルニーの練習曲」はミスリードで、火事が起きる前からルシアは相当上手だったとか?
わざとチェルニーの何番練習曲をやってるか書かないことで、ルシアはせいぜいチェルニー40番程度のレベルだと思わせておいて、実は60番程度の力があったんですよーってやつ?
というか、そうじゃないと岬先生の指導がいくら素晴らしくても、コンクールに出ることすら叶わなかっただろうし。
どうも納得いかない。

……

と、いろいろ不満な点もあるけど、ルシアという一人の女の子の成長物語として楽しむことができました。
私も岬先生にピアノを教わりたい♪笑



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『おやすみラフマニノフ』
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『いつまでもショパン』
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