【文庫本】ツルゲーネフ(1982)『はつ恋』(神西清訳)新潮社
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:ツルゲーネフ訳者:神西清
発行年月日:1982年1月30日
出版社:新潮社
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感想
★★★★☆図書館本
『イニシエーション・ラブ』でマユがツルゲーネフを読んでいると書かれていたので。
ツルゲーネフといえば『はつ恋』だろう、ということで読んでみました。
恥ずかしながらツルゲーネフは名前しか知らなくて、作品を読んだのもこれが初めてだったのですが、文章が詩的で美しいですね。しかも読みやすい!
詩的な表現って抽象的だし、私自身に想像力がないので理解しづらくて苦手なんですよね(^^;)
でもこの作品は、読んでいて情景が心に浮かぶようでした。
特に、ヴラジーミルが初めてジナイーダを見かけたときの描写なんて、瑞々しさにあふれていてすごく好きだなあ。
ジナイーダが語る空想の話なんかも、きらきらしていて素敵だなーと思いました。翻訳の妙というのもあるのかもしれませんね。
ジナイーダの美しさや魅力は、そんな素敵な言葉の数々で語られるので、ヴラジーミルが彼女に惹かれるのがよく分かります。
自由奔放で美しい年上の公爵令嬢……そんな人が隣の家に住んでいたら、16歳の少年ならころっと手玉に取られるだろうなー。
ジナイーダって高慢ながらも可憐で憎めないです。
21歳だから十分大人の女性だけど、「女性」より「少女」と形容するほうがふさわしい愛らしさ。
私が男性だったら、きっと彼女の取り巻きの一人になるに違いない(笑)
それだけにヴラジーミルの初恋の結末はあまりにも痛ましいです。
初恋は実らないとよく言うけど、初恋の相手が自分の父親と不倫してたというのは……
少年の淡い恋がこんな形で破れるのは辛いです(;_;)
彼が大人になってもそのことを引きずっているのも当然ですよね。
ブラジーミルはずっと父に憧れ、父からの関心を求めていたというのに。
その父もジナイーダも、ヴラジーミルよりも先に死んでしまうというのがなんとも哀しいですね。
最後、ヴラジーミルが貧しい老婆の臨終に立ち会った際の「……そしてわたしは、ジナイーダのためにも、父のためにも、そしてまた、自分のためにも、しみじみ祈りたくなったのである」という一文は、彼は死によって苦しみから解き放たれて自由になれると考えた……ということだろうか。
解説がほしいな。
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