【単行本】村田沙耶香(2016)『コンビニ人間』文藝春秋
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:村田沙耶香発行年月日:2016年7月30日
出版社:文藝春秋
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感想
★★★★☆図書館本
「普通」とは何か、を考えさせられた一冊。
主人公の恵子は発達障害ってやつなのかな?と思いながら読んでいたところに、恵子が地元の友達が出てきてハッとしました。
ミホたちは恵子が普通じゃないのはセクシャリティの問題で悩んでいるからだと勝手に解釈していたけど、私もミホたちと同じことをしていたことになるんですよね。
この物語で言うところの普通の人間には、家庭の問題、病気や障害、性の悩み、といった何らかの理由があるほうが、恵子を理解するのに都合がいい。
だから恵子が普通ではない理由を探してしまうんだろうな。(その理由が合ってようが間違ってようが。)
たださ、理由を明らかにすることも時には必要じゃないかな、とも思ってしまいます。
恵子視点で書かれた物語だから、別に誰かに迷惑かけてるわけじゃないんだし放っておいてあげてよ、と読んでいて何度も思ったけど……
それはフィクションの世界のことだからで。
恵子の言動に振り回される妹や両親の苦労、心痛は察するに余りある。
子どもの頃に病院にかかって、そのときは病気ではないと言われた恵子だけど、今なら昔とは違って研究も進んでいることだろうし、何かしらの病名は付くんじゃないかと思うんですよ。
正直、もし自分が恵子の友人や同僚、まして家族だったりしたら、恵子は病気なんだと言われた方が安心するだろうし。
だって恵子の普通じゃない言動も、全部病気のせいにできるもの。
でも恵子は自分が病気だとは考えてないんだよね。
病気か個性か……難しい問題で、素人があれこれ言うべきではないのでしょうが。
「コンビニの音」が聞こえて、最後には「コンビニ人間」になってしまった恵子。
そんな恵子を痛ましくも思うし、でもコンビニは恵子がようやく見つけた自分の居場所だから、純粋に応援したいとも思う。
とにかく白羽に搾取されなくてよかったです。
恵子ほど極端じゃないにしても、私もマニュアルや誰かの指示がないと行動できないところがあるから、恵子がコンビニ人間という生き方を選んだのは少し分かる気がするかな。
ともすると重くなりがちなテーマですが、リアリティとユーモアが絶妙なバランスで溶け合っていて見事でした。
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