【文庫本】中山七里(2011)『おやすみラフマニノフ』宝島社
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:中山七里発行年月日:2011年9月20日
出版社:宝島社
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感想
★★★★☆図書館本
『さよならドビュッシー』の続編。
前作と時間軸が少し重なっているので、岬先生って本当に音大で先生やってたんだ~なんて思ってしまった(笑)
それから、前作では超嫌なやつだった下諏訪さんの印象も、今作でガラッと変わった!
相変わらず音楽の描写が素晴らしくて、作中に出てくる曲は全部好きになりました(^^)
今回の舞台は岬先生が臨時講師を務める音大。
主人公は音大生で、定期演奏会のために構成されたオーケストラはなかなかまとまらない……と、なんだか『のだめカンタービレ』のような設定。
そう思うからか、オケの場面はとてもわくわくしました!
のだめ的な青春物語だけではなく……
完全密室で保管されていたはずの2億円のストラディバリウスが何者かに盗まれ、そればかりか有名ピアニストでもある学長専用のピアノが破壊、ついには学長への殺害予告……!
と、音大内で次々に事件が起こります。
前作に比べて、殺人事件こそ起きないものの、今作はミステリー小説として読んでも面白く感じました。
まあ、犯人捜しに関してはさほど難しくはないので、謎解きに重きを置く方にとっては面白くないかもしれませんが。
楽器保管室に最後に入ったのが初音ということを考えると、犯人は初音以外あり得ないじゃないですか。
オーディション時の柘植学長の指が震えていたので、これはきっと病気せいで、学長はもう以前のようにはピアノを弾けないんだろうなーと。
そして初音はそれを隠すために事件を起こして、演奏会が中止になるよう仕向けたのだろうと私は推理しましたが……これは見事に正解!嬉しい!
ですが、ストラディバリウス盗難のトリックに関しては分からなかったです。
ペーパークラフトのストラディバリウスですり替えって、できるものなんだろうか。
さすがにバレるだろ……と思うのですが。
一連の事件を学長が警察に届けないのは、可愛い孫を庇うためだと思っていたら……
実は孫への愛情なんてちっともなくて、全て自分の名誉を守るためだった、という私にとっては意外なオチで、これも面白かったです。
孫の才能は愛せても、孫本人への愛情は湧かないらしい。
ひどい話だと思うけれど、私のような凡人には理解できない、天才ゆえの孤独や苦悩というものがあるんだろうな。
『おやすみラフマニノフ』のタイトルどおりの、静かな余韻を感じさせてくれるラストでした。
ただ、一つだけ言わせてほしい。
作中で、楽器保管室が厳重に警備されていることに対して、近寄りがたいという意味で「敷居が高い」という表現が使われていましたが、それってどうなの(汗)
話し言葉ならともかく……
書き言葉で、それもプロが書いた文章で誤用があると正直がっかりします。
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