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「家」に人生を支配された人々の物語――山崎豊子『花紋』

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明治・大正の家制度って、想像以上に人の人生を縛っていたんだなあ。 誇り高き大地主の総領娘っていうと、私は『風と共に去りぬ』のスカーレットが思い浮かんだけど… あっちはスカーレットが前向きでたくましいからか、物語全体がどこかカラッとしているんですよね。 それに対して、郁子とこの作品に漂う陰鬱さよ。 ろうたけた美貌とたぐいまれな才を宿し、大正歌壇に彗星の如く登場し、束の間の輝きを放って突如消息を断った幻の歌人御室みやじ。河内長野の大地主の総領娘として、苛酷な因襲に抗いながら、国文学者荻原秀玲との宿命の恋に全てを賭け、略伝に夭逝と記されたように、自らの生をまで世間から葬り去った、激しい情熱と苦悶に貫かれたその半生を重厚な筆致でたどった長編小説。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『花紋』 著者:山崎豊子 発行年月日:2006年4月5日 出版社:新潮社

戦時中の空気の重さが胸に刺さる――佐多稲子「乾いた風」(『キャラメル工場から――佐多稲子傑作短篇集』所収)

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労働や戦争がテーマならいくらでもドラマチックな描き方ができそうなのに、それをせず、淡々とした筆致なのがかえって人間の心を露わにしているようで引き込まれました。 少女工員の労働の日々を描いたデビュー作「キャラメル工場から」、非合法の地下政治活動での女性の心の傷を描く「疵あと」、女ともだちとの数十年ぶりの再会と過去の事件を描く「時に佇つ その五」……労働、地下活動、戦争、東京や長崎の町、懐かしい友人たちについて自らの経験をもとに書き続けた「短篇の名手」佐多稲子。その最良の作品を収録した文庫オリジナルの短篇選集。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『キャラメル工場から――佐多稲子傑作短篇集』 著者:佐多稲子 編者:佐久間文子 発行年月日:2024年3月10日 出版社:筑摩書房 収録作品 キャラメル工場から 怒り プロレタリア女優 牡丹のある家 橋にかかる夢(『私の東京地図』より) 「女作者」 虚偽 薄曇りの秋の日 狭い庭 乾いた風 色のない画 水 かげ 疵あと 時に佇つ その五 こころ

仇討ちの作法に詳しくなれるかも!?――永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』

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映画が面白かったので原作小説も読んでみました。 結末を知っている身からすると、木挽町の人たちの過去語りが長いな…と、途中まで正直ちょっと退屈だったのですが、映画では語られなかった部分も描かれていたので(単に私が見落としていただけかもしれないけど)、読んで良かったです。 雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏で、菊之助なる若衆が果たした見事な仇討。白装束を血に染めて掲げたのは作兵衛の首級。その二年後。事件の目撃者を訪ねる武士が現れた。元幇間、立師、衣装部屋の女形……。彼らは皆、世の中で居場所を失い、悪所に救われた者ばかり。「立派な仇討」と語られるあの夜の〈真実〉とは。人の情けと驚きの仕掛けが、清々しい感動を呼ぶ直木賞・山本周五郎賞受賞作品。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『木挽町のあだ討ち』 著者:永井紗耶子 発行年月日:2025年10月1日 出版社:新潮社 ※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

シモネタ多めで飽きるが、刺さる話は強烈に刺さる――京極夏彦他『ひどい民話を語る会』

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面白くないわけじゃないけど… ウンコとオナラの話ばかりでさすがに飽きたな。 荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ! 「囲炉裏端にはコンプライアンスもポリティカル・コレクトネスもないんです。そして――。ひどい民話が誕生するんです」京極夏彦(「はじめに」より) 「桃太郎」の冒頭でお爺さんは柴刈りに、お婆さんは洗濯に行く。その理由とは……? メジャーな昔話の陰には数々の「ひどい民話」が埋もれている。 妖怪を愛好する面々が縦横無尽に語る、知られざる民話の世界。 全国各地から選りすぐりの民話を紹介する、伝説的トークイベント「ひどい民話を語る会」が、満を持して書籍化! 学問としても芸術としても敬遠され、表舞台からパージされてきた荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ。 ※下品な話が苦手な方はご遠慮ください。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『ひどい民話を語る会』 著者:京極夏彦、多田克己、村上健司、黒史郎 発行年月日:2022年10月28日 出版社:KADOKAWA

地方社会の閉鎖性を浮き彫りにする一冊――窪田新之助『対馬の海に沈む』

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ノンフィクションを読み終えて、「うわ、マジか」と声が漏れた作品は久しぶりでした。 人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………? 職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『対馬の海に沈む』 著者:窪田新之助 発行年月日:2024年12月10日 出版社:集英社

社会の圧力に飲み込まれた一人の女性――平路「モニークの日記」(呉佩珍ほか編『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』所収)

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文学作品としては表題作・陳雪「蝶のしるし」が抜きん出ていたなーと思ったけど、個人的には平路「モニークの日記」がめちゃくちゃ刺さりました! 複数形の、台湾文学。 恋愛結婚と出産を経て、幸せな家庭を手にしたはずの主人公が、「よき娘」「よき妻」を演じてきた人形のような過去に別れを告げ、同性への愛に生きる決心をする……その後の台湾レズビアン文学に大きな影響を与えた表題作「蝶のしるし」のほか、女性作家の小説全八篇を収録。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『台湾文学ブックカフェ<1>女性作家集 蝶のしるし』 著者:江鵝、章緣、ラムル・パカウヤン、盧慧心、平路、柯裕棻、張亦絢、陳雪 訳者:白水紀子 編者:呉佩珍、白水紀子、山口守 発行年月日:2021年12月20日 出版社:作品社 収録作品 江鵝「コーンスープ」 章緣「別の生活」 ラムル・パカウヤン「私のvuvu」 盧慧心「静まれ、肥満」 平路「モニークの日記」 柯裕棻「冷蔵庫」 張亦絢「色魔の娘」 陳雪「蝶のしるし」

誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう――前野ウルド浩太郎「孤独なバッタが群れるとき 『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1」

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飛行機がバッタの群れに巻き込まれたら、バッタが機体の隙間に潜り込んでエンジンが止まるかもしれないってマジで!? 空から殺虫剤撒いて駆除すりゃいいじゃんって思ってたけど、バッタって思いのほか厄介なんだな… 『呪術廻戦』芥見下々先生おすすめ! 第4回いける本大賞を受賞した名著が新書で登場! 【「新書版まえがき」より】 現在、私はバッタ博士としてアフリカでサバクトビバッタと格闘している。その模様は『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)に綴っており、本作は、それよりも前のバッ タ博士になろうかどうか思い悩みつつ、修業に明け暮れた頃に焦点を当てている。まさに「エピソード1」となる。今となっては気恥ずかしいが、青春の日々を、ひたすらバッタだ けを見つめることに捧げた青年が織りなすエピソードに、貴方をいざないたい。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『孤独なバッタが群れるとき 『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1』 著者:前野ウルド浩太郎 発行年月日:2022年5月30日 出版社:光文社

日本人はもっと魚を食べよう――川本大吾『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』

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子どものころ、間違ってサンマのはらわたを食べてしまったせいで、大のサンマ嫌いになった私。 小骨も多くて食べにくいし、どうしてこんな魚が秋の味覚として人気なのかサッパリ理解できなかったなー。 大人になってようやく美味しさが分かるようになったというのに、肝心の「美味しいサンマ」は消えてしまったという… 深刻な大不漁、超高値、外国産のシェア拡大――。取材歴30年以上の「さかな記者」が明かす、日本の漁業・水産業が衰退している訳。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』 著者:川本大吾 発行年月日:2023年12月20日 出版社:文藝春秋

孤独と抵抗を静かに語る言葉たち――劉霞(リュウ・シア)『毒薬』(劉燕子・田島安江訳・編)

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この本が発売された2018年3月時点では著者はまだ北京で軟禁状態に置かれていたようですが、同年7月に軟禁を解かれドイツへ出国。 さらに今年7月からは日本に滞在しているそうで… 『私は外務省の傭われスパイだった』 を読んだばかりということもあって、日本も危ないんじゃ?と心配になってしまいます。 劉霞から劉暁波へ、詩集『牢屋の鼠』への返歌。 一匹の魚、一羽の鳥となった劉暁波への切なくかなわぬ恋文。 劉暁波に与え続けた同志としてのエール。 劉暁波亡きあとも生きるための薬である。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『毒薬』 著者:劉霞 訳・編者:劉燕子・田島安江 発行年月日:2018年3月2日 出版社:書肆侃侃房

バッタ研究にかける情熱に圧倒される――前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』

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著者が『ファーブル昆虫記』に感銘を受けて昆虫学者を目指すところまでは理解できる。 でも…「バッタに食べられたい」ってどういうこと!? バッタ被害を食い止めるため、バッタ博士は単身、モーリタニアへと旅立った。 それが、修羅への道とも知らずに……。『孤独なバッタが群れるとき』の著者が贈る科学冒険ノンフィクション! ( Amazon.com より引用) 作品情報 『バッタを倒しにアフリカへ』 著者:前野ウルド浩太郎 発行年月日:2017年5月20日 出版社:光文社

日本の弱腰外交を突きつける一冊――原博文『私は外務省の傭われスパイだった』(茅沢勤訳)

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タイトルからして衝撃的。 「スパイもののノンフィクション?ちょっと小説っぽくて面白そう」くらいの軽い気持ちで読み始めましたが、読み進めるうちに全然そんな軽い話ではないと息をのみました。 筆者は中国残留孤児2世で外務省の元対中国スパイ。 96年に中国国家安全省に逮捕され、懲役8年の判決を受けた。外務省は彼を見捨てた。 「日本のスパイ活動」と「中国の監獄」という数奇な実体験の書き下ろし。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私は外務省の傭われスパイだった』 著者:原博文 翻訳:茅沢勤 発行年月日:2008年5月19日 出版社:小学館

コンプライアンス中毒の正体は脳にあった――中野信子『咒の脳科学』

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内容は面白かったし、自分の中の価値観を見直すきっかけにもなったのだけど。 正直なところ、咒とはあまり関係なかったような…? なぜ、私たちは、周りの言葉にこんなに苦しんだりするのでしょう? 人を息苦しくさせる――SNSにあふれる呪いの言葉、病気にもしてしまう暗示。刷り込まれる負けグセ。 脳を中毒にする――イケニエを裁く快楽、罰を見たい本能や正義という快感。ウソつきの遺伝子がモテる。 知りたくなかった現実――男のほうが見た目で出世、女はここまで見た目で損をする。脳に備わっていたルッキズム。 私たち人間の社会は咒(まじない)でできていると言って過言ではないのです。 なぜなら言葉が、意識的と無意識的とにかかわらず人間の行動パターンを大きく変えてしまう力があるから。 人間関係や仕事、人生の幸不幸も、あなたを取り巻く社会の空気さえ。 そして今SNSがひとりひとりを孤立させ、言葉はいっそう先鋭化しています。 正義や快楽に中毒する脳そのものが、そもそも人間社会を息苦しくする装置です。 本書の役割は、脳にかけられた咒がどのようなものかを知らせ、解放することにあります。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『咒の脳科学』 著者:中野信子 発行年月日:2025年3月4日 出版社:講談社

やっと分かった、「サラダ記念日」が刺さらなかった理由――俵万智『サラダ記念日』

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7月6日にアップしたかったけど間に合わなかった…。 〈「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日〉――日常の何げない一瞬を、新鮮な感覚と溢れる感性で綴った短歌集。生きることがうたうこと。従来の短歌のイメージを見事に一変させた傑作! ( Amazon.com より引用) 作品情報 『サラダ記念日』 著者:俵万智 発行年月日:1989年10月4日 出版社:河出書房新社

実家じまいに悩む全ての人へ――高殿円『私の実家が売れません!』

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ダンナの両親に読ませたい~~! 郊外築75年、大量のガラクタ、恐怖の再建築不可物件……。 残された実家は超問題だらけ!! 笑いと涙、前代未聞の実家じまい本! 維持費に相続手続き、片付けに親族問題、税金対策に売却まで、いま話題の”実家じまい”問題にドラマ&漫画化多数の人気作家・高殿円氏が挑み、リアルな実体験を綴ります。 親戚トラブルの回避、税金に相続問題、長年放置している家財の片づけ方、不動産仲介業者に断られた物件を意外な場所で売る方法まで……。 不動産の専門家による解説を収録し、楽しく読めながら自然と実践的な知識も身に付きます。 笑えて泣けて、知識もつく、超お得な1冊!”実家じまい”のお悩みを全解決する、ページをめくる手が止まらなくなる新感覚の人情派「実家じまい」エッセイです。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私の実家が売れません!』 著者:高殿円 発行年月日:2024年7月19日 出版社:エクスナレッジ

教養ある悪口のすすめ――堀元見『教養悪口本』

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悪口繋がりで読んでみたら、この本にも中原中也の「青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」が出てきて笑った。 (関連記事: 天才たちのレスバ合戦が面白すぎた――彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』 ) インターネットに氾濫する悪口がつまらないのは、そこに知性もユーモアも宿っていないからだ。「こいつ無能。死ね」というツイートを見て、楽しい気分になる人はいない。「こいつ無能」と言いたくなった時は、代わりに「植物だったらゲノム解析されてる」(本書14ページ)と言おう。周囲も「えっ、何? どういうこと?」と興味を惹かれるだろうし、生命科学の発展に思いを馳せる良い機会になる。 不快さを、楽しさや知的好奇心に変えられるのが、「正しい悪口」の効能なのだ。 僕はこれを「インテリ悪口」と称して、インターネットに書き溜めてきた。<略> 皆さんが何かをバカにしたくなった時、本書を活用してほしい。僕が可能な限りの知性とユーモアを詰め込んだ「インテリ悪口」を使ってほしい。 嫌なことがあった時、インテリ悪口を使うことで、溜飲も下がるし、笑い飛ばすこともできる。ちょっとだけ勉強にもなると思う ( Amazon.com より引用) 作品情報 『教養悪口本』 著者:堀元見 発行年月日:2021年12月30日 出版社:光文社

夕方が一日でいちばんいい時間なんだ――カズオ・イシグロ『日の名残り』(土屋政雄訳)

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平凡で、真面目で、ロマンチストで…自らの執事としての「品格」を疑うことなく生きてきたスティーブンス。 きっと第二次世界大戦以前の、大英帝国がまだ栄華を誇っていた時代であれば、そのまま何の疑問も抱かずに生き抜くことができたのでしょう。 でも、戦争の終結とともに社会構造が大きく変わり、変わりゆく時代について行けず取り残されようとしている。しかもそのことに気づいた今、自分は老い始めている。 なんて恐ろしいんだろう。 品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々-過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。 ( 楽天ブックス より引用) 作品情報 『日の名残り』 著者:カズオ・イシグロ 訳者:土屋政雄 発行年月日:1990年7月77日 出版社:中央公論社

天才たちのレスバ合戦が面白すぎた――彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』

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今だったらXでレスバする感覚でしょうか? 好きな作家がしょうもないことでバトルする姿…。 うーん、見たいような見たくないような。 文豪と呼ばれる大作家たちは、悪口を言うとき、どんな言葉を使ったのだろうか。 そんな疑問からできたのが、本書『文豪たちの悪口本』です。 選んだ悪口は、文豪同士の喧嘩や家族へのあてつけ、世間への愚痴など。随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました。これらを作家ごとに分類し、計8章にわたって紹介していきます。 川端康成に「刺す」と恨み言を残した太宰治、周囲の人に手当たりしだいからんでいた中原中也、女性をめぐって絶交した谷崎潤一郎と佐藤春夫など、文豪たちの印象的な悪口エピソードを紹介しています。 文豪たちにも人間らしい一面があるんだと感じていただけたら、うれしく思います。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『文豪たちの悪口本』 編者:彩図社文芸部 発行年月日:2019年6月21日 出版社:彩図社

「私は美人」と思い込む――酒井順子『私は美人』

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最初のうちは面白くてページをめくる手が止まらなかったけど、美人に関する文章ばかり続くとさすがに疲れたな。 でもまあ、それだけ「美人」というテーマはネタが尽きないということか。 女に生まれたからには、誰もが目指す「美人」という山の頂点。しかし、私たちはなぜ美人になりたいのか。そもそも美人とは何なのか。性別、年齢、地域はもちろん、一人の人間の主観と客観の間においてさえ微妙に揺れる美人観。美人を目指さずにはおれない女性たちの行動と心理に潜むその本質を、持ち前の鋭い観察眼で喝破し、ユーモアで包んで読ませる、身につまされる美人論。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私は美人』 著者:酒井順子 発行年月日:2007年11月30日 出版社:朝日新聞社

棄てられない記憶――村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』

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猫好きとしては読むのを躊躇ってしまうタイトル。 村上春樹のお父さんって戦争を経験している世代なんだ… ということにまず驚いた。 時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある。ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた。―村上文学のあるルーツ。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『猫を棄てる 父親について語るとき』 著者:村上春樹 発行年月日:2020年4月25日 出版社:文藝春秋

人間性とアンドロイド性――フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(浅倉久志訳)

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虫を見つけたら問答無用で殺虫剤を振りかける私でさえ、プリスがクモの脚を切断するシーンには打ちのめされました。 イジドアと接することで、ひょっとしてアンドロイドたちにも思いやりの気持ちが芽生えるのかな?と思った矢先だっただけに。 第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界! リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作。 35年の年を経て描かれる正統続篇『ブレードランナー2049』キャラクター原案。( Amazon.com より引用) 作品情報 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 著者:フィリップ・K・ディック 訳者:浅倉久志 発行年月日:1977年3月15日 出版社:早川書房 アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) 感想 ★★★★☆ 図書館本 訳者あとがきで、後藤将之氏の論評が引用されていて、そこに    人間もアンドロイドも、ともに、親切な場合もあれば、冷酷な場合もある。ディックが描こうとしたのは、すべての存在における人間性とアンドロイド性との相剋であって、それ以外のなにものでもない。 と書いてあるのを読んで、まさにその通りだなと感じました。 人間であるイジドアは逃亡アンドロイドに最初から親切だったけど、同じく人間であるレッシュは、死を目前にしたアンドロイドに本を読むわずかな時間さえ許さず殺してしまうくらい冷酷な人物として描かれています。 でも、全ての登場人物が「親切」と「冷酷」に二分されているわけではないですよね。 最初はアンドロイドや模造動物のことなんてただの機械としか思っていなかったリックが、次第にアンドロイドに同情を示すようなったり、感情移入できない存在として描かれていたレイチェルがリックに恋愛感情に似たものを抱くようになったり。 「親切」と「冷酷」、どちらも合わせ持つのが人間で、私たちは人間にもアンドロイドにも、ち...