【文庫本】綾辻行人(2017)『どんどん橋、落ちた<新装改訂版>』講談社
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:綾辻行人発行年月日:2017年2月15日
出版社:講談社
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感想
★★★★☆購入本
たまたま書店で、館シリーズの隣に面陳されていたのを見て手に取ってみました。
カバーを読むとね、すごく面白そうだったんですよ。
(最近よくあるカバーの上に宣伝用カバーがかけられてるやつ。)
なんと、綾辻行人先生から「読者への挑戦状」だというじゃありませんか!
私はどちらかというと、真剣に謎解きしながらミステリーを読むタイプじゃないので、「犯人当て」にそれほど興味はないのですが……
館シリーズは面白かったし、何よりカバーによると「短編集」らしいので、それなら気軽に楽しめそう!と思って読んでみた次第です。
で、結果。
期待通り、面白かったです!騙される喜びを味わうことができました!
ちなみに犯人は…全く当たらなかったです(笑)
↓以下、作品ごとの簡単な感想
第一話 どんどん橋、落ちた
「なんじゃそりゃ」と思うと同時に、解決篇を読むと「た、確かに…」と納得もしてしまう。
実際、私も「裸で元気に遊びまわる子供たち」には変だなと感じていたから、解答を読んで「なるほど」と思いました。
嘘はないしヒントも用意されていて、フェアかアンフェアでいうとフェアだろうけど……
M**村のM**から"monkey" を連想するのは難しいですよねー(笑)
第二話 ぼうぼう森、燃えた
「どんどん橋」の続編。「そうきたか!」って感じ。
「どんどん橋」が伏線になっていたのには「さすがだなー」と感動しました。
第三話 フェラーリは見ていた
面白かったけど、これはアンフェア寄りな気がする。
いくらK子さんの頭の中に、「フェラーリ=馬の名前」という認識があったとしても、事情を何も知らない人たちにいきなり「フェラーリに乗っている派手なおじいさんがいて…」なんて説明しないだろうよ。
でも「フェラーリは見ていた」というタイトルが、まんま事件の真相に繋がっていたのに「おおっ」と思いました。(ま、フェラーリは全然関係なかったことが最後に明らかになるわけですが。笑)
ところで、作中に何度も出てくる「暗示的」「予見的」の意味が分からずモヤモヤ。
あとがきによると、笠井潔『ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?―探偵小説の再定義』(早川書房、2001年)に元ネタ(?)があるらしいので読んでみようと探してみたのですが…
どうやら中古本しかないみたい。中古の、しかも単行本となるとなあ。(単行本は場所を取るから、文庫本しか買わないようにしているもので。汗)
第四話 伊園家の崩壊
タイトルページに「※この作品はフィクションであり、既存のいかなる人物・団体ともいっさい関係がない。仮に読者が何らかの人物・団体を連想するようなことがあったとしても、それはまったくの誤解というものである。(作者)」という注意書き付きだったので、何らかのパロディだということは予想しながら読み始めましたが……
まさか某国民的アニメのパロディだったとは(笑)
そんな遊び心満載の話なのに、ちゃんとしたミステリーだしストーリーも面白かったので、某一家のことは忘れて夢中になって読みましたよ!
清々しいほどのバッドエンド、好きです。
第五話 意外な犯人
私はこれが一番面白かったです。
カメラマンが犯人だったこともだけど、U君の言う「綾辻さん自身」が本当に「綾辻さん自身」を指していたという仕掛けがすごく好き!
ただ、ラストが……。
「ぼうぼう森」あたりから、U君は若いころの綾辻先生自身で、仕事で悩んでいる現在の綾辻先生を励ましに来ているのかな、と想像していたのですが……
U君の「あなたは違うんです。」という言葉と、甲虫と赤い蟻の意味が分からず、私の頭の中は?だらけ。
大山誠一郎さんの解説を読んで、何となーく理解できたような、できなかったような(^^;)
※後日追記
「どんどん橋」連作の番外編が『人間じゃない:綾辻行人未収録作品集』に収録されています。
綾辻先生とU君の関係に、じーんと来ました。
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↓「館シリーズ」感想
『十角館の殺人<新装改訂版>』
『水車館の殺人』
『迷路館の殺人』
『人形館の殺人』
『時計館の殺人<新装改訂版>(上)』
『時計館の殺人<新装改訂版>(下)』
『黒猫館の殺人』
『暗黒館の殺人(上)』
『暗黒館の殺人(下)』
『びっくり館の殺人』
『奇面館の殺人』