【文庫本】中野京子(2018)『名画の謎:対決篇』文藝春秋



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:中野京子
発行年月日:2018年8月10日
出版社:文藝春秋
そっくりの構図で裸婦を描いた2枚。片や絶賛され、もう一方は物議をかもした。その理由は?絵画監賞に新たな視点を提示した著者による人気シリーズ第4弾は、様々な名画たちが対決。ピカソとルノワールが同じテーマで描いた2枚、美しき肖像画の王妃たち、父の悲哀、性愛の絶頂をめぐる情熱…。絵画の世界は広く奥深い! (Amazon.com より引用)




感想

★★★★☆
購入本

表紙のエリザベート様に惹かれて購入。
さほど絵に興味があるわけではないのですが、最低限の素養は身につけておきたいなーと思っていたところに、この本と出会いました。

絵画はさっぱりな私ですが、宝塚歌劇のミュージカル『エリザベート』に感激して、エリザベート皇后(以下シシィ)についていろいろ調べる中でヴィンターハルターが描いた《オーストリア皇妃エリザベート》(表紙の絵とは違うやつ)を知りました。初めて見たときは、その美しさに驚いたものです。

この本は、テーマごとに二つの名画を並べて、それらを対比させながら鑑賞しよう、という趣向で書かれたのだとか。
タイトルに「対決篇」と付いていたので、平安時代の絵合的に、絵の優劣を競い合うのかと思っていたのですが、そういうわけではなかったです(^^;)

絵はオールカラーできれいだし、解説も分かりやすく面白いし、私みたいな絵画初心者の入門書にはピッタリな本でした。
シシィの肖像画以外だと、クリムト《接吻》、ミレイ《オフィーリア》、アルマ=タデマ《見晴らしのよい場所》は、パッと見て「きれい!」と思えて好きだな~。

クリムト《接吻》


ミレイ《オフィーリア》

(関連記事:【文庫本】シェイクスピア(2002)『ハムレット』(野島秀勝訳)岩波書店

アルマ=タデマ《見晴らしのよい場所》


ベルばらでは登場時点でおじいちゃんだったから、リゴー《ルイ十五世の肖像》は、その美形っぷりにビックリ!ベルばら登場人物の誰よりもイケメンだと思いました(笑)
衣装も素敵!絹の手触りが伝わってきそう。

目当てのシシィは、同じく美貌で知られたナポレオン三世妃・ウージェニーと並べられていました。(シシィの肖像画を描いたヴィンターハルターが、ウージェニーの肖像画も描いていたから。)
この二人の肖像画、同じ画家が描いたのに絵の雰囲気が全く違うんですよ!
ウージェニーの肖像画は、きれいに着飾っていて愛らしいのに対し、シシィの方は、著者の中野さんが「皮膚の上を神経が走っているかのよう」と解説しているように、彼女の繊細さが絵の中に漂っています。
さらに髪が洗い髪のようだったり、白いドレスが下着のようだったりすること、この絵が公式肖像でなく皇帝の私的なものだったことから、「皇帝の、彼女に対する執着の在り処が窺えるよう」だと指摘されていて、なるほど~!と思いました。私はフランツとシシィのカップルが好きなので、そうだったら嬉しいなあ。

あとは、この本を通して「メデュース号事件」を知ることができたのが良かったです。

この事件を描いたジェリコー《メデュース号の筏》の迫力といったら!彼の事件に対する怒りや、それを社会に訴えようという強い意志が感じられます。

有名な事件らしいのですが、私が知っている海難事故といえばタイタニック号沈没事故とノルマントン号事件くらいのもので(^^;)

タイタニック (吹替版)



他にも様々な視点から名画を「対決」させていて、とても面白かったです。
読んでいて感じたのは、聖書を題材にした絵が多いんだなーということ。
聖書に関する知識が全くといっていいほどないので、解説がないと何の絵かも分からないし、解説を読んでもなかなか理解できなかったり。
絵画に限らず、芸術作品はよく「自分の感じた通りでいい」「自由に楽しめばいい」と言われますが、私の場合は、時代背景や画家の経歴など、予備知識がないと、そもそも作品から何も感じ取れないので、鑑賞を楽しむためにも少しは勉強しようと思いました。
まずは名画の謎シリーズを一作目から読んでみようかな。


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