【文庫本】円地文子(1972)『なまみこ物語』新潮社

なまみこ物語(新潮文庫)



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:円地文子
発行年月日:1972年8月25日
出版社:新潮社
たぐいなきみやびの陰に、摂関政治の忌わしい相剋を露呈した平安朝。一条帝のもとに中宮として入内し、帝の狂おしいばかりの愛を得ながら、なお悲運の生涯を辿らねばならなかった定子。その、はかない宿命を物語りつつ、関白・道長の野望実現のため、策動させられる生神子姉妹の、あやなす悲劇を鮮明に描き上げた「なまみこ物語」。ほかに「歌のふるさと」「ますらお」を併録する。 (Amazon.com より引用)




感想

★★★☆☆
図書館本

いやー。途中まで本気で「生神子物語」という物語が実在したのかと信じ込んでいましたよ( ̄▽ ̄)
本文中に引用される古文の生神子物語は全て作者の創造だというのだから、円地先生凄いです。
(さすがに行国が出てきたあたりから、あれ?と思い始めましたが……)

実は私、子どものころ『枕草子』より先に『源氏物語』に出会ったせいか、枕より源氏、清少納言より紫式部、定子より彰子派なのです。
それでもこの物語の定子の美しさ、聡明さには引き付けられました。
老獪な道長にも対等に渡り合える才覚を持っていて、本当に魅力的!
定子が道長の陰謀にハメられることなく、一条天皇との愛を貫くことができて良かった。

当時の人々は、実際のところ招人のことをどう思っていたんだろう。
この物語の登場人物たちのように、「どうせ偽物だ」「演技だろう」とか思っていたのかな。
そういえば『源氏物語』の弘徽殿女御は、朱雀帝の御世の天変地異も、思い込みだと一蹴してたっけ。


この本には表題作の『なまみこ物語』以外に、『歌のふるさと―伊勢物語―』『ますらお』も収録されていて、私は『歌のふるさと―伊勢物語―』が一番好きかな。
伊勢物語を基にした短編集(?)で、文章がとても美しく親しみやすかったです。
竹西寛子さんが解説で触れていた、円地先生の小説『女面』も読んでみようかな。



↓平安時代or平安文学関連の本の感想
永井路子『この世をば(上)』『この世をば(下)』
酒井順子『源氏姉妹』
篠綾子『在原業平歌解き譚 月蝕』
篠綾子『紫式部の娘。賢子がまいる!』
篠綾子『紫式部の娘。賢子はとまらない!』
夏山かほる『源氏五十五帖』
川村裕子『装いの王朝文化』



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