【文庫本】永井路子(1986)『この世をば(下)』新潮社

この世をば〈下〉 (新潮文庫)



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:永井路子
発行年月日:1986年9月25日
出版社:新潮社
30歳で一躍トップの座に踊り出た道長は、兄道隆の子伊周の排撃にも成功した。そして娘の彰子を一条帝に入内させ、やがて待望の男子が生まれる。かくて一手に権力を握った道長は、抜群の平衡感覚で時代を乗り切り、“望月の世”を謳歌する―。“権力の権化”という従来のイメージではない、人間味溢れる平凡な男としての藤原道長を描き出し、平安貴族社会を見事に活写する歴史長編。 (Amazon.com より引用)




感想

★★★★★
図書館本

上巻では意図せず権力闘争に巻き込まれた平凡児・道長、という印象でしたが、下巻では徐々に強かさを身につけて、すっかり氏の長者としての風格を備えた人物になりました。
そんな彼が位人臣を極めていく様子は、とても興味深く面白かったです。
汚い手を覚えて、ライバルの邪魔もするし、天皇とさえ駆け引きをする。

でもそんな道長に嫌悪感を抱くことなく、むしろ応援したくなるのは、上巻から描かれてきた道長の抜群の平衡感覚のおかげでしょうか。
あー、道長も苦労してたんだなーって(⌒-⌒; )笑
たとえ相手が邪魔な存在だとしても、徹底的に痛めつけることはせず、きちんとフォローを入れて余計な恨みを買わないようにしているところも、凡人らしい気の配りようで好感を持ちました。
この本を読んで、朝廷を我が物顔で牛耳る道長……のイメージはガラリと変わったなあ。

そして藤原行成の有能ぶりにも驚きました!
これまで、字が綺麗な、清少納言の男友達……という印象しかなかったもので(^_^;)
蔵人頭って、天皇の発言や命令をそのまま臣下に伝えるだけかと思っていましたが、大変な役割を担っていたのですね。
それから藤原実資もいいキャラしてました。『小右記』ってちゃんと読んだことないから、今度読んでみようっと。




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