【単行本】麻生享志(2020)『『ミス・サイゴン』の世界―戦禍のベトナムをくぐり抜けて』小鳥遊書房
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:麻生享志発行年月日:2020年5月8日
出版社:小鳥遊書房
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感想
★★★☆☆図書館本
高畑充希ちゃんのキム、見たかったなー!
……新型コロナウイルスのせいで、上演中止になったミュージカルの一つ。『ミス・サイゴン』。
まあ、私はチケット取れなかったのでどのみち見られなかったわけですが、やっぱり中止は悲しいです。
そんな『ミス・サイゴン』の解説書がこの本。
私は『サイゴン』は2017年の公演を1回見ただけ。大まかなストーリーしか覚えてなかったけど、この本を読んでいるとそのときの記憶が蘇ってくるような思いでした!
正直、この作品の舞台となったベトナム戦争については「アメリカvsソ連の代理戦争」くらいの知識しかなかったので、この本を読んで、戦争の背景や、アメリカとベトナム戦争の関係、何より、この戦争でどれほどの人たちが翻弄されたかを知って、キムやクリス、エンジニアたちの物語に改めて胸を揺さぶられました。
アメリカ人が「戦争におけるアメリカの大義と正義」を心から信じてベトナム戦争に臨んでいたとは思いもしなかったので、クリスに対する見方が変わりそう!
近いうちにまた上演してくれることを願っています。
他、1991年のニューヨーク公演の際に、キャスティングに関して人種をめぐる問題があったと知って、なんとも言えない暗ーい気持ちになりました。
なんでも、イギリス人俳優のジョナサン・プライスがロンドン公演の際、フランスとベトナムの混血児であるエンジニアを演じるにあたって、肌を黄色く塗ったいわゆるイエローフェイスで舞台に立ったのが問題視され、ニューヨークではプライスの出演が拒否されたんだとか。
これには、ええーーー!って感じ。
そういえば、これまた全公演中止になった『ヘアスプレー』でも、ブラックフェイス問題がありましたね。
最近になって騒がれ出した問題かと思いきや、結構前から言われてたことだったんですね。
でも、白人がアジア人を演じようと思ったら、メイクで少しでも見た目を近づけようとするのは至極当然のことでは?
そこに差別の意図なんてないのは明らかじゃんか……と私は思うのですが。
何かと揉めたものの、結局はプライスがエンジニアを演じたそうで、制作チームがニューヨーク側の圧力に屈しなかったことに「よくやった!」と言いたいです。
……
ていうか、プライスが『サイゴン』のロンドン・オリジナル・キャストだったなんてビックリなんですけど!
彼は映画俳優のイメージだったもので。
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