【文庫本】田中芳樹(2007)『銀河英雄伝説5 風雲篇』東京創元社
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:田中芳樹発行年月日:2007年10月31日
出版社:東京創元社
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感想
★★★★★図書館本
えー!ヤンがフレデリカにプロポーズ!?\(◎o◎)/
なんか唐突。
フレデリカのヤンに対する恋心はずっと描かれてきたけど、ヤンがフレデリカを恋愛対象として見ているような描写ってあったっけ?
それとなく匂わせるような描写はあった気がするけど、それでもプロポーズに至るほどの想いを抱いていたようには思えなくて。
「フレデリカ、この戦いが終わったら……」
はっ!これは俗に言う死亡フラグ!
そうか、ヤンはこの戦いで死ぬからこんな唐突にプロポーズしたのね。
と、もうすぐ戦死するであろうヤンに思いを馳せながら読んでいたのですが、彼は無事バーミリオン星域会戦を生き抜いて、しかも念願の年金生活を手に入れましたね/(^o^)\
フレデリカも退役し、結婚間近だそうで。
おめでとうー!
うん。ヤンとフレデリカのことは純粋におめでたいのですが。
バーミリオンの死闘で同盟は負けちゃったんですよね( ̄▽ ̄)
しかも、ヤンはあと少しで勝てるところだったのに、トリューニヒトが自己保身のために降伏を受け入れてしまったという何ともやるせない結末。
ヤンに勝利を譲られた格好になったラインハルトも辛かっただろうなあ。
ラインハルトとヤンの会談のシーンは心が震えましたよ!
ついにこの二人が!
二人が語る専制政治と民主主義は読み応えがあったなあ。
「自由惑星同盟を私の手に売りわたしたのは、同盟の国民多数がみずからの意志によって選出した元首だ。民主共和制とは、人民が自由意志によって自分たち自身の制度と精神をおとしめる政体のことか」
「失礼ですが、閣下のおっしゃりようは、火事の原因になるという理由で、火そのものを否定なさるもののように思われます」
「そうかもしれぬが、では、専制政治もおなじことではないのか。ときに暴君が出現するからといって、強力な指導性をもつ政治の功を否定することはできまい」
「私は否定できます」
「どのようにだ?」
「人民を害する権利は、人民自身にしかないからです。言いかえますと、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム、またそれよりはるかに小者ながらヨブ・トリューニヒトなどを政権につけたのは、たしかに人民自身の責任です。他人を責めようがありません。まさに肝腎なのはその点であって、専制政治の罪とは、人民が政治の害悪を他人のせいにできるという点につきるのです。その罪の大きさにくらべれば、100人の名君の善政の功も小さなものです。まして閣下、あなたのように聡明な君主の出現がまれなものであることを思えば、功罪はあきらかなように思えるのですが……」
ヤンのこの主張は第1巻のころから繰り返し述べられてきたもの。
私、ヤンが政治、あるいは自由について述べる場面では毎回ドキッとしてしまうんですよね。
もし現実に、トリューニヒトのような、内心では民衆をバカにし国家を私物化しようとする人物であってもパッと見は優秀そうで弁舌巧みな政治家が現れたとして、私はその人の本質を見抜けるだろうかって。
そしてもし見抜けたとして、私は積極的にその人物と戦おうとするだろうかって。
きっと私にはそんな勇気も正義感もないだろうなーと思ってしまうあたり、やはり私も楽をしたがる民衆の一人なんでしょうね。
でも、昨今の国際情勢を鑑みると、社会を担う市民としての責任を考えないといけないと改めて感じました。
……
ところで、本編とは全っっ然関係ない話なんですけど。
薄々気づいてはいたのですが、グリューネワルト「伯爵夫人」って「女伯爵」の意味だったのね!?!?
私はてっきり、ベルばらのデュ・バリー伯夫人みたいに、公妾として宮廷に出るにあたってグリューネワルト伯爵なる人物と書類だけの結婚をしたものだとばかり(;^ω^)
「だが、姉にたいしてラインハルトが用意するもののリストに、”あらたな配偶者”という項目は完全に欠落していた。」
いつまで待ってもグリューネワルト伯爵が登場しないわけです(笑)
↓「銀河英雄伝説」シリーズ感想
『銀河英雄伝説1 黎明篇』
『銀河英雄伝説2 野望篇』
『銀河英雄伝説3 雌伏篇』
『銀河英雄伝説4 策謀篇』
『銀河英雄伝説5 風雲篇』
『銀河英雄伝説6 飛翔篇』
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