【文庫本】内田康夫(2006)『本因坊殺人事件』幻冬舎


※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:内田康夫
発行年月日:2006年10月10日
出版社:幻冬舎
四〇年前の初恋の女性に「あなたに逢えたから、いつ死んでもいい」という言葉を遺し、対局先の鳴子温泉で死亡した高村本因坊。さらに奥多摩渓谷では記録係を務めた新宮三段の死体が。対局中の不可解な仕草、試合後の謎の行動…。一体、高村は何を伝えたかったのか。新聞記者・近江俊介と若手棋士・浦上彰夫が謎の連続殺人に挑む傑作ミステリ。 (Amazon.com より引用)

感想

★★★☆☆
図書館本

囲碁ミステリーというふれこみだったので囲碁好き(へぼへぼだけど)としては気になって読んでみましたが……
別に囲碁じゃなくてもよくないか?というのが正直な感想。
だって囲碁をテーマにするくらいだから、石の形や位置に謎を解く手がかりがあるのかと思いきや、暗号が隠されていたのは考慮時間(持ち時間)だったんですから。
それなら将棋やチェスでも同じでは?と(^^;)
(将棋やチェスの棋譜に考慮時間まで記載されるかどうかは知らないので何とも言えないのですが。)

とは言え、タイトル戦を背景に起こった連続殺人事件と、それを巡る棋士・新聞社・政治家の駆け引きというのは面白かったです。
大型棋戦掲載で新聞の発行部数が大幅に伸張するなんて、今では考えられない話ですけどね(;^ω^)
昔は囲碁界にそれほどの勢いがあったのかと驚きました。

それに、対局中の臨場感やプロ棋士たちの心情といったものも文章から伝わってきて、この作品の世界に引き込まれました。
事件の真相を隠蔽することに決めた浦上の行いは決して褒められたものではないけど、師弟の結びつきの強さを感じられて私は好きだなあ。
彼は本因坊家の流れを汲む者として、きっと囲碁界を牽引することでしょうね。


あ、そうだ!この作品に『ヒカルの碁』の緒方先生のモデルが登場すると聞いていたのですが……
いました!死体発見者の緒形清二氏!神滝温泉の次男坊で町役場勤務ですって(^^)
温泉好きだし行ってみたいなーと思って調べたら、神滝温泉はすでに廃業しているのだとか。残念。


それから、作中に登場する「仙秋サンライン」。
かつては「山中七里」と呼ばれていたそうで、もしや『さよならドビュッシー』シリーズの中山七里先生のペンネームはここから!?



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