【文庫本】菊池寛(2021)『受難華』中央公論新社
※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。
作品情報
著者:菊池寛発行年月日:2021年1月25日
出版社:中央公論新社
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感想
★★★☆☆図書館本
あらすじに「昼ドラ的展開」とあったのでドロドロ愛憎劇かと思いきや、ジメジメ感は少なく、むしろ女性陣が生き生きと魅力的に描かれていてカラッとしたお話しでした。
テンポよく話が展開されるので確かにドラマには向きそう。私もぐいぐい引き込まれました!
物語の舞台は大正時代。主人公3人組はいずれも裕福な家庭のお嬢様で、女学校卒業後は就職することもなく20歳そこそこで結婚するんだから、現代の感覚では想像しづらいですね。
でも結婚してめでたしめでたしというわけではなく、照子は婚約者に先立たれるし、桂子は結婚後に夫に隠し子がいたことが判明、寿美子は不倫相手を諦められないまま愛してもいない男と結婚。3人とも波乱万丈の人生です。
当時はまだ処女性が重視されていたというのは私も知識としては知っているので、望月が照子と藤木の婚前交渉に動揺する気持ちはまあ理解はできるけど……。
正直、新婚旅行を中断して引き返すほどのことか!?とは思ってしまいましたね(^_^;)
解説のエッセイスト・酒井順子さん(『源氏姉妹』の著者ですね。)によると、この作品が雑誌『婦女界』で連載されていた当時は、行方不明中の照子について「照子は自殺したか?生きているか?」を読者に予想させたんだとか。
今の私たちからすれば、そんなことで自殺なんかしないよって感じですよね。
私が一番共感したというか、強く惹かれたのは桂子だなあ。
誰よりも幸せな結婚をしたと思っていた桂子が、夫に子供まで成した女がいたと知ったときの衝撃たるやいかばかりか。
にも関わらず、京都の女と対面したときの対応が立派で、惚れ惚れしました。夫を見限って家を出た決断も早かったですね。
私だったらただ狼狽えるばかりで、桂子みたいにはできないわ。
ただ、桂子がこれだけ思い切った行動を取れるのも、頼れる実家があればこそですよね。
自分を捨てた守山に頼るしかなかった京都の女のことを考えると、胸が締めつけられる思いです。
寿美子の境遇はただただ羨ましい!
二人の男に愛されて、しかも夫は外見も良くてお金持ち。その上、寿美子にベタ惚れときてる。
夫のお金で毎日遊び歩いて、社交会の華ともてはやされ……前川なんかどうでもいいじゃんねえ(笑)
最後は照子と桂子も、なんだかんだで丸く収まって3人ともハッピーエンド。
林の寿美子への愛が報われて良かったと心から思いましたよ。
なんか女性陣が強い分、男性陣が総じて情けない印象でした(笑)
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