【文庫本】アベ・プレヴォー(1972)『マノン・レスコー』(青柳瑞穂訳)新潮社

マノン・レスコー(新潮文庫)



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:アベ・プレヴォー
訳者:青柳瑞穂
発行年月日:1972年3月5日
出版社:新潮社
自分を死ぬほど愛している純情な貴公子デ・グリュウに、賭博、詐欺などの破廉恥な罪を重ねさせながら、自らは不貞と浪費のかぎりを尽し、しかもなお、汚れを知らぬ少女のように可憐な娼婦マノン。プレヴォーはその美しく多情な姿を創造して、永遠の女性像に新しいタイプを加えた。今日においてもなおみずみずしさを失わない18世紀フランスロマン主義文学の不朽の名作である。 (Amazon.com より引用)



感想

★★★☆☆
図書館本

『イニシエーション・ラブ』に出てきた小説。
名作と名高い古典文学ですが、これまで読んだことがなかったので、この機会に読んでみました。

「悪気なしで罪を犯している」マノンの小悪魔っぷりときたら……!
容姿について具体的な描写はないものの、マノンはとにかく美しい女性で、一目で男性を惹きつけてしまうのです。
私が男性だったらイチコロだと思います(笑)

贅沢好きで浮気性なマノンだけど、悪意は全く感じられなくて、むしろ愛らしくて憎めません。
なぜなら彼女はただ自分の本能に従ってるだけだから。

そんな自由奔放なマノンに振り回されるのが、哀れな主人公グリュウ。
僧籍に入ることを勧められるほど品行方正だったグリュウなのに、美貌のマノンに夢中になったあまり賭博やら詐欺やらの悪事に手を染め、どんどん落ちぶれていくのです。
引き返すチャンスは何度もあったのに……

何度マノンに裏切られても彼女を諦めきれないグリュウには、アホらし( ̄▽ ̄)と呆れながらも、彼女の魅力に抗えないのも分かるから、ちょっと同情しちゃったな。

ただ、そうは言ってもグリュウの場合、どんなピンチが訪れても必ず親類や友人が助けてくれるし、賭博や詐欺はともかく、脱獄や殺人まで犯しても、名家の出身だからという理由で大したお咎めもなく普通に生活できているのが、何だかなーって感じ。
マノンとの逃避行は所詮、貴族のお坊ちゃんの一時の気の迷いでしかなかったんだろうな。
あの終わり方なら、彼は元の生活に戻るんだろうし。

主人公カップルの悲恋よりも、身分制度の理不尽さが印象に残った作品でした。




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