【新書】深水黎一郎(2007)『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』講談社

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ! (講談社ノベルス)



※当ブログの記事は全てネタバレ前提で書いていますのでご注意ください。

作品情報

著者:深水黎一郎
発行年月日:2007年4月5日
出版社:講談社
新聞に連載小説を発表している私のもとに一通の手紙が届く。その手紙には、ミステリー界最後の不可能トリックを用いた「意外な犯人」モノの小説案を高値で買ってくれと書かれていた。差出人が「命と引き換えにしても惜しくない」と切実に訴える、究極のトリックとは?読後に驚愕必至のメフィスト賞受賞作。  (Amazon.com より引用)




感想

★★★☆☆
図書館本

タイトルの『ウルチモ・トルッコ』とは、イタリア語で「究極のトリック」を意味するらしい。
この本は、その「究極のトリック」を用いたミステリー小説です。

ミステリーにおける究極のトリックとは、すなわち「読者が犯人」というもの。
犯人当ての本格ミステリーには、読者があっと驚く「意外な犯人」がつきものですよね。
そういう意味では、予め犯人が分かっていると面白さは半減しそうなものですが……
私の場合は、「読者が犯人」って一体どうやって!?と、ワクワクしながら読むことができました!

そもそも「意外な犯人」のパターンは出尽くしているのだとか。

作中に例として挙げられたものは
・探偵が犯人
・被害者が犯人
・死人が犯人(死人の指にピストルを握らせて、死後硬直で銃爪が引かれる)
・動物(オランウータン、ヘビなど)が犯人
・事件の記述者が犯人
・自然現象(風や雪など)が犯人
・物心つかないような子供が犯人
・その場にいた全員が犯人
・事件を担当した法医学者が犯人
などなど……

私はミステリー初心者なもので、上記の例の中でネタが分かるのはわずかですが、確かに出尽くした感はありますね。
こうなってくると、行きつく先は「読者が犯人」であるのも納得できます。
もし小説中の探偵役のキャラクターに「犯人はあなただ!」なんて言われたら……と想像すると、面白いじゃないですか!

作中では「読み終わって本を閉じた読者に、『私が犯人だ』と言わせることができれば、作者の勝ち」と語られていました。
その点については全くその通りだと思いますが……

うーん。少なくとも私はこの本を読んで「私が犯人だ」とは思わなかったな。
トリックは面白いと思ったけど。

被害者(?)である香坂誠一は、自分の書いた文章を他人に読まれることに大きな恐怖を感じる人。
この香坂から、作家である作中の「私」の元に手紙が届くところから、この物語は始まるのですが……
物語後半で、実はこの『ウルチモ・トルッコ』という小説自体が、作中の「私」が新聞に連載中の小説であることが明かされます。
作家の「私」は、香坂が書いた文章をそのまま新聞に連載することで、私たち「作品外の存在である読者を、無理やり作品の中に引っ張り込んで」しまうことに成功したわけです。

そして多くの「読者」に自分の書いた文章を読まれた香坂はどうなるか……?
彼はそのストレスに耐え切れずに体が弱っていき、結果、不審死してしまいました!(◎_◎;)
作品の外にいる私たち読者の、作品を「読む」という行為が、彼を殺すことになってしまったのです。
これにはなるほどな〜と思いました。

ただ、これを以って読者=犯人というのはやや強引かなと感じるのですが。
設定上は確かに読者が小説内の存在になったわけだけど……私自身はやっぱり自分が小説内の存在になったとは思えなかったし(汗)
別に香坂を殺したくて小説を読んでいたわけでもないですしね。

あ、それから、このトリックは超常現象の存在が前提だから仕方ないのかもしれないけど、超能力関連の描写が長々と続いて、読んでいてちょっと疲れました。
だから作品の世界感に入り込めなかった、というのもあるかも。
そんなわけで、私は犯人にはなれなかったのでした(^^;)


そういえば、イカサマ双子姉妹が使っていたESPカードって『賭ケグルイ』オリジナルじゃなかったんですね。



懐かしいな〜


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