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実家じまいに悩む全ての人へ――高殿円『私の実家が売れません!』

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ダンナの両親に読ませたい~~! 郊外築75年、大量のガラクタ、恐怖の再建築不可物件……。 残された実家は超問題だらけ!! 笑いと涙、前代未聞の実家じまい本! 維持費に相続手続き、片付けに親族問題、税金対策に売却まで、いま話題の”実家じまい”問題にドラマ&漫画化多数の人気作家・高殿円氏が挑み、リアルな実体験を綴ります。 親戚トラブルの回避、税金に相続問題、長年放置している家財の片づけ方、不動産仲介業者に断られた物件を意外な場所で売る方法まで……。 不動産の専門家による解説を収録し、楽しく読めながら自然と実践的な知識も身に付きます。 笑えて泣けて、知識もつく、超お得な1冊!”実家じまい”のお悩みを全解決する、ページをめくる手が止まらなくなる新感覚の人情派「実家じまい」エッセイです。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私の実家が売れません!』 著者:高殿円 発行年月日:2024年7月19日 出版社:エクスナレッジ

教養ある悪口のすすめ――堀元見『教養悪口本』

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悪口繋がりで読んでみたら、この本にも中原中也の「青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」が出てきて笑った。 (関連記事: 天才たちのレスバ合戦が面白すぎた――彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』 ) インターネットに氾濫する悪口がつまらないのは、そこに知性もユーモアも宿っていないからだ。「こいつ無能。死ね」というツイートを見て、楽しい気分になる人はいない。「こいつ無能」と言いたくなった時は、代わりに「植物だったらゲノム解析されてる」(本書14ページ)と言おう。周囲も「えっ、何? どういうこと?」と興味を惹かれるだろうし、生命科学の発展に思いを馳せる良い機会になる。 不快さを、楽しさや知的好奇心に変えられるのが、「正しい悪口」の効能なのだ。 僕はこれを「インテリ悪口」と称して、インターネットに書き溜めてきた。<略> 皆さんが何かをバカにしたくなった時、本書を活用してほしい。僕が可能な限りの知性とユーモアを詰め込んだ「インテリ悪口」を使ってほしい。 嫌なことがあった時、インテリ悪口を使うことで、溜飲も下がるし、笑い飛ばすこともできる。ちょっとだけ勉強にもなると思う ( Amazon.com より引用) 作品情報 『教養悪口本』 著者:堀元見 発行年月日:2021年12月30日 出版社:光文社

夕方が一日でいちばんいい時間なんだ――カズオ・イシグロ『日の名残り』(土屋政雄訳)

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平凡で、真面目で、ロマンチストで…自らの執事としての「品格」を疑うことなく生きてきたスティーブンス。 きっと第二次世界大戦以前の、大英帝国がまだ栄華を誇っていた時代であれば、そのまま何の疑問も抱かずに生き抜くことができたのでしょう。 でも、戦争の終結とともに社会構造が大きく変わり、変わりゆく時代について行けず取り残されようとしている。しかもそのことに気づいた今、自分は老い始めている。 なんて恐ろしいんだろう。 品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々-過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。 ( 楽天ブックス より引用) 作品情報 『日の名残り』 著者:カズオ・イシグロ 訳者:土屋政雄 発行年月日:1990年7月77日 出版社:中央公論社

天才たちのレスバ合戦が面白すぎた――彩図社文芸部編『文豪たちの悪口本』

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今だったらXでレスバする感覚でしょうか? 好きな作家がしょうもないことでバトルする姿…。 うーん、見たいような見たくないような。 文豪と呼ばれる大作家たちは、悪口を言うとき、どんな言葉を使ったのだろうか。 そんな疑問からできたのが、本書『文豪たちの悪口本』です。 選んだ悪口は、文豪同士の喧嘩や家族へのあてつけ、世間への愚痴など。随筆、日記、手紙、友人や家族の証言から、文豪たちの人となりがわかるような文章やフレーズを選びました。これらを作家ごとに分類し、計8章にわたって紹介していきます。 川端康成に「刺す」と恨み言を残した太宰治、周囲の人に手当たりしだいからんでいた中原中也、女性をめぐって絶交した谷崎潤一郎と佐藤春夫など、文豪たちの印象的な悪口エピソードを紹介しています。 文豪たちにも人間らしい一面があるんだと感じていただけたら、うれしく思います。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『文豪たちの悪口本』 編者:彩図社文芸部 発行年月日:2019年6月21日 出版社:彩図社

「私は美人」と思い込む――酒井順子『私は美人』

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最初のうちは面白くてページをめくる手が止まらなかったけど、美人に関する文章ばかり続くとさすがに疲れたな。 でもまあ、それだけ「美人」というテーマはネタが尽きないということか。 女に生まれたからには、誰もが目指す「美人」という山の頂点。しかし、私たちはなぜ美人になりたいのか。そもそも美人とは何なのか。性別、年齢、地域はもちろん、一人の人間の主観と客観の間においてさえ微妙に揺れる美人観。美人を目指さずにはおれない女性たちの行動と心理に潜むその本質を、持ち前の鋭い観察眼で喝破し、ユーモアで包んで読ませる、身につまされる美人論。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『私は美人』 著者:酒井順子 発行年月日:2007年11月30日 出版社:朝日新聞社

棄てられない記憶――村上春樹『猫を棄てる 父親について語るとき』

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猫好きとしては読むのを躊躇ってしまうタイトル。 村上春樹のお父さんって戦争を経験している世代なんだ… ということにまず驚いた。 時が忘れさせるものがあり、そして時が呼び起こすものがある。ある夏の日、僕は父親と一緒に猫を海岸に棄てに行った。歴史は過去のものではない。このことはいつか書かなくてはと、長いあいだ思っていた。―村上文学のあるルーツ。 ( Amazon.com より引用) 作品情報 『猫を棄てる 父親について語るとき』 著者:村上春樹 発行年月日:2020年4月25日 出版社:文藝春秋

人間性とアンドロイド性――フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(浅倉久志訳)

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虫を見つけたら問答無用で殺虫剤を振りかける私でさえ、プリスがクモの脚を切断するシーンには打ちのめされました。 イジドアと接することで、ひょっとしてアンドロイドたちにも思いやりの気持ちが芽生えるのかな?と思った矢先だっただけに。 第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界! リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』原作。 35年の年を経て描かれる正統続篇『ブレードランナー2049』キャラクター原案。( Amazon.com より引用) 作品情報 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 著者:フィリップ・K・ディック 訳者:浅倉久志 発行年月日:1977年3月15日 出版社:早川書房 アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229)) 感想 ★★★★☆ 図書館本 訳者あとがきで、後藤将之氏の論評が引用されていて、そこに    人間もアンドロイドも、ともに、親切な場合もあれば、冷酷な場合もある。ディックが描こうとしたのは、すべての存在における人間性とアンドロイド性との相剋であって、それ以外のなにものでもない。 と書いてあるのを読んで、まさにその通りだなと感じました。 人間であるイジドアは逃亡アンドロイドに最初から親切だったけど、同じく人間であるレッシュは、死を目前にしたアンドロイドに本を読むわずかな時間さえ許さず殺してしまうくらい冷酷な人物として描かれています。 でも、全ての登場人物が「親切」と「冷酷」に二分されているわけではないですよね。 最初はアンドロイドや模造動物のことなんてただの機械としか思っていなかったリックが、次第にアンドロイドに同情を示すようなったり、感情移入できない存在として描かれていたレイチェルがリックに恋愛感情に似たものを抱くようになったり。 「親切」と「冷酷」、どちらも合わせ持つのが人間で、私たちは人間にもアンドロイドにも、ち...